アジア全域における沿岸エリアの不動産価値また必要性は非常に高まっており、多くの国々で、都市開発のための大規模な人工島の開発が進められている。水上都市は、海面上昇の影響緩和につながるだけでなく、新たな土地を開拓するよりも持続可能な方法として注目されている。

沿岸部の都市には多くの人々が集まっており、毎週300万人の人々が田園地方から沿岸部へと移ってきているというデータもある。国連ハビタット(都市化と居住の問題に取り組む国連機関)は、2035年までに大都市の90%が沿岸都市になると予想している。

アジアではシンプルに土地を増やす(=海を埋め立てる)ことで、土地のニーズに応えてきた。東京の20%、シンガポールの25%は埋め立て地で占められているという。

アジア諸国の中には、土地の所有権の問題などがあるため、新たな土地を開発するより埋め立て地を作る方が簡単で時間もかからないという国もあるという。すでに人口が密集している沿岸都市では、開発に適した広大な土地を見つけることは難しく、また土地が見つかったとしても費用面など立ち退きや移転に関する複雑な手続きが生じることになる。その点埋め立ては、地主とのトラブルや既存の都市を壊すことなく開発が可能とデベロッパーと地方自治体側、双方にメリットがある手段であったと言える。

しかし一方で、埋め立て地は生態系を壊すことになるなど、環境に有害であるという報告もなされている。近年、アジア諸国全体で埋め立て地が及ぼす環境への影響を見直す動きが見られ、埋め立てプロジェクトを中止する国も出てきている。しかし沿岸部開発の需要は今なお存在しており、新しいアプローチを考えていく必要がある。

代案として提案されているのが、水上都市である。といっても実際に海に浮かんでいるわけではなく、海底に固定されているプラットフォームのイメージである。これは新しい技術ではなく、石油掘削装置や大型ドック(=船渠(せんきょ))などと基本的には同じで、その上に都市が形成されると考えればわかりやすいだろうか。

このような水上都市の潜在的経済力は、数千億ドルとも言われている。多くの国々で埋め立て建設が禁止され、沿岸部の人口が増え続ける中、水上都市が唯一の選択肢と言えるかもしれない。

現在世界各国で水上都市モデルが検討されており、オランダ、フランス、中国などで開発が進んでいる。

現在稼働に至っている水上都市はないものの、埋め立て地よりも環境に優しいアプローチとして注目を集めている。また水上都市は、埋め立て地よりも費用がかからず早く完成するという。

水上都市は、次の不動産開発ブームとしてこれからますます注目を集めていくことは間違いないだろう。

【参照】Floating cities : The next big real estate boom

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セカイプロパティ編集部
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