投資家からの人気も高いマレーシア第二の都市人口を誇るジョホール州だが、不動産部門については伸びが鈍化しているという。

現地では供給過剰の状態が続き、売れ残り物件が多数出ている。2019年第一四半期の時点での売れ残り物件は、360億RM(約9,320億円)相当に当たる51,000件に上り、内16,000件は地元住民用の物件だという。

状況改善のための決定的な策もなく、不動産市場の低迷に懸念の声も高まっている。関係者は、次の5つの点に課題があると見ている。

1. 裏目に出た州政府の対応
政府は、ジョホールバルにおける高級住宅の新規開発の全面凍結や、また外国人バイヤー向け不動産の価格帯を高く設定するといった対応策を取ってきたが、これらの策が消費者マインドや投資家の信頼に影響を与えたことは否定できない。

昨年の不動産取引は若干上向きになり、2015年以来のプラスになったなど、良いニュースがないことはないが、多くの投資家にとっては取るに足らないといったところであろうか。土地付物件や商業不動産への需要は依然として高いという。

2. 不明確な物件リリース方法
ジョホール州では、物件価格により20~40%程度を地元住民用として確保しなければならないと決められているが、この割り当てや物件のリリースタイミングについては不明確な部分が多い。

これらの点を明確に整理し直すことで、供給過多は改善され、地元住民もそれぞれの希望に見合う物件を手に入れることができ、デベロッパーの健全な経営体制にもつながると考えられる。

3. 外国人向け物件の価格引き上げ
2010~2012年の不動産ブームと言われた時代には、毎週のように新しい物件がリリースされていたが、その後世界経済の低迷を受け、投機的不動産投資の抑止策が取られるようになった。その一つが外国人の不動産購入規制であり、それまで購入可能とされていた物件価格が50万RM(約1,300万円)から100万RM(約2,590万円)へ引き上げられた。

ところが100万RM以上の物件への需要は少なく、そこへ世界市場の低迷も加わり、投資家の動きは鈍化した。

4. 重要プロジェクトの延期
クアラルンプールとシンガポールを結ぶ高速鉄道(HSR)ならびにジョホールバルとシンガポールを結ぶ高速輸送システム(RTS)の開発延期は、投資家センチメントに大きな影響を与えた。

またシンガポールの経済がジョホール州に及ぼす影響も大きい。米中の貿易摩擦の影響もあり、それまで1.5~2.5%で推移していたシンガポールの経済成長率は、0~1%に落ち込んでいる。不安定な経済情勢の中、ビジネスの規模を縮小するシンガポールの企業が増える可能性があるが、真っ先にカットされるのはシンガポールで働くマレーシアの人々であり、70万人を超えるマレーシア人労働者が影響を受けると見られている。

5. 世界情勢の影響
不安定な経済情勢による影響は、今や世界各国で確認できる。世界銀行の年次報告書によれば、2019年の世界経済成長は、貿易や投資などの弱さが響き、2.6%程度にとどまる見込みだという。

世界的な市場低迷としばらく続くことが予想される不安定な情勢は、投資家のリスク選好度にも影響を与えるだろう。

【参照】Five things the Johor property sector could do without

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セカイプロパティ編集部
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