観光スポットとして人気の高いシンガポールのセントーサ島。その一部に高級住宅が建ち並ぶセントーサ・コーヴというエリアがある。そのセントーサ・コーヴの不動産価格が大幅に下落しているという。

セントーサ・コーヴの売却価格の中央値は、1㎡当たりS$1,367(約10.8万円)で、2004年に最初の物件が販売されてから最も低い価格となっている。(最高値は2010年のS$2,200(約17.4万円))

<物件のほとんどが外国人向け>
シンガポールでは、昨年7月より不動産相場抑制策が取られており、外国人の住宅購入に課す追加的購入者印紙税(ABSD)が15%から20%に引き上げられるなど、外国人には厳しい対応となっている。セントーサ・コーヴはシンガポールで唯一外国人が土地や土地付き物件を購入することができるエリアで、バイヤーの多くは外国人であるため、大きな影響を受けたと考えられる。

しかし、下落傾向は相場抑制政策以前の2011年頃から始まっているため、その他にも原因があると考えられる。

2017年から2018年には、シンガポール全体の不動産価格は9.1%の上昇を見せた。しかしセントーサの不動産価格は、ほんのわずかな上昇にとどまった(2017年:0.8%、2018年:1.6%)。価格上昇の背景には、新規物件の発売と土地取得費の増加などが考えられるが、セントーサ・コーヴでは新規物件の発売がなかったため、価格への影響は見られなかった。

<投機的バイヤーの減少>
また、売却者印紙税(SSD)の導入や強化等の影響も考えられるという。SSDは、物件を購入後3年以内に売却したオーナーに支払い義務のある印紙税で、購入後の売却が早ければ早いほど税額が上がる。これが投機的な不動産購入に歯止めをかけた形となった。セントーサ・コーヴではバイヤーの中でも投機家が多いため、影響が顕著に表れたと言えるだろう。さらに2013年導入された不動産ローン審査の新規定「債務返済比率」(TDSR)では、月々のローン返済額が月収の60%を超えないよう制限されている。

<中国の影響>
2008年の世界的金融危機以前は、中国の外貨管理体制も緩く、中国人による欧米諸国の資産購入も頻繁に行われていた。しかし中国で外貨管理が厳しくなると、彼らの投資活動も消極的になり、外国人バイヤーの多くを中国人が占めるセントーサ・コーヴもその余波を受けたものと考えられる。

<今後の見解>
しかし専門家は、セントーサ・コーヴの不動産市場は近いうちに復活すると見ている。現在のセントーサ・コーヴの物件価格は、シンガポールのその他の地域の価格とあまり変わらず、セントーサ・コーヴの物件も長期的に見て価値があるということにバイヤーも気づくはずである。シンガポールは、今後も東南アジアにおける高級不動産市場における「安全資産」としてのポジションを維持し、投資家を惹きつけていくものと考えられる。

【参照】Property prices at Sentosa Cove drop to record low, a unit just sold at 50% loss

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セカイプロパティ編集部
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