2020年、投資家が注目すべき都市は、パリ、シンガポール、バンクーバーの3都市である。これらの都市については、運輸・交通の大幅なアップグレード、テクノロジー部門における堅調さ、政治情勢の変化などによって高級不動産市場の活性化が期待できるという。

<パリ>
2020年はパリにとって活気のある年になると見られている。その要因の一つが260億ユーロ(約3兆1,190億円)規模の都市再生プロジェクト「グラン・パリ計画(Grand Paris Project)」である。自然と都市環境のバランスを図る持続可能な開発、輸送にかかる時間を短縮する交通網の再編などがテーマとなっており、4本の地下鉄新路線の建設や2本の現存路線の拡張などが含まれる。新駅周辺では数々の開発が行われる予定である。

また2024年にはオリンピックの開催も控えており、投資や開発の面でさらに盛り上がりを見せると予想されている。

イギリス総合不動産会社Savillsによると、今年のパリのプライム市場(不動産の上位5%)の価格は4~5.9%値上がりすると見られている(2019年の上昇率は6.4%)。またPricewaterhouseCoopersの報告書においても、パリは2020年注目の都市1位にランキングされている。

マクロン政権が行った税制改革は富裕層に有利とも言われており、高級不動産投資の増加が期待できる。

高級住宅については、在庫物件や土地も限られていることから、今年も価格上昇が続くと見られている。パリ中心部では新規開発可能な土地は少ないとされているが、特に新駅が建設される郊外の都市については今後の開発が期待され、富裕層の関心を集めている。

イギリスのEU離脱の影響も大きく、パリの高級不動産への関心は、国内外で高まっている。

<シンガポール>
シンガポールは、PricewaterhouseCoopersの報告書における「アジア・太平洋地域注目の都市」1位にランキングされている。

近年は供給過剰が見られ、シンガポールのプライム市場は低迷していたが、昨年は大企業による支社設立や空室率の低さなどオフィス部門の好調が目立った。

シンガポールは、政治的安定、堅調な金融部門、開かれた経済、安定した通貨などで高く評価されており、好調は今年も続くと見られている。イギリス不動産コンサルタントKnight Frankによると、今年のシンガポールの不動産価格は3%程度上昇すると予想されている。

香港の情勢不安などから、東南アジアがより安全な投資先として認識されるようになり、シンガポールの高級住宅市場を動かしている中国人バイヤーの関心も高まりを見せている。今年1月の中国人バイヤーからの問い合わせ件数は15%増加したという。シンガポールでは外国人が不動産を購入する際20%という印紙税が課されるが、富裕層や大企業による購買を妨げることにはつながっていないようだ。

ひとつ懸念すべきなのは、次々と明らかになっている新型コロナウィルスの影響である。現在シンガポールは、中国本土からの観光客の受け入れを禁止しているが、今後香港についても入国禁止とする可能性があるという。

<バンクーバー>
バンクーバーでは、2016年に外国人による不動産購入に対して15%の課税が導入され、その結果外国人バイヤーの多くがモントリオールなどの他の都市に移るなど、ここ数年市場は低迷している。今年は劇的な回復こそ期待できないものの、回復の兆しは見られるという。

現在のバンクーバーは、外国人バイヤー、特にアジアからのバイヤーが撤退し、多くの高級住宅の在庫が残されている状態である。さらにバイヤーの多くは手頃な価格の物件を求めていることから、すべての在庫を回収するには時間がかかると考えられる。しかし富裕層の投資家にとっては、高級住宅を割引価格で購入する機会が豊富にあると言える。

さらにテクノロジー部門における注目度も高まっている。ネット通販最大手のアマゾンは、ニューヨークにおける第二本社の建設を断念した後、バンクーバーにオフィスを構えることを決定した。またその他にもバンクーバーにオフィスを構える企業は増えているという。

外国人バイヤーの数は減少したものの、香港のカナダパスポート保持者など、安定を求めてバンクーバーに興味を示すバイヤーが増えているのも事実である。今後もバンクーバーへの移住者は定期的に増加していくと見られ、高級市場は比較的楽観視されている。

【参照】In 2020, luxury real estate markets in Paris, Singapore and Vancouver offer intriguing opportunities to investors

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セカイプロパティ編集部
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