リタイア後に向けた資産運用や節税効果を狙えるという理由から、不動産投資を始めてみたい経営者の方も多いのではないでしょうか。しかし、いざ始めるとなると難しいこともあり、慎重に進めていかなければなりません。

今回の記事では、経営者が不動産投資を行うメリット5選に加え、不動産投資の戦略について紹介します。また、最後に注意点もまとめているので、最後まで参考にしてみてください。

経営者が不動産投資を行うメリット5選

会社経営者が不動産投資を行うことで、どのようなメリットがあるのでしょうか。5つのメリットを紹介するので1つ1つ確認しましょう。

1.本業のリスクヘッジに役立つ

1つ目のメリットは、本業のリスクヘッジに役立つことです。一般的に、会社経営者は金銭的に安定したイメージを持っている方が多いかもしれません。しかし、ビジネスの変化や経済状況によって、会社経営が傾く可能性が考えられます。

会社として、一定の不動産収入があれば会社経営の健全化に役立つ場合があります。また、経営者が個人的に不動産を所有する場合でも、金銭的なリスク回避につながります。

2.所得税・住民税の節税効果を得られる

不動産投資は、所得税や住民税の節税効果を得られやすいメリットがあります。これは、不動産投資に関わる費用を経費として計上することで、不動産所得をマイナスにし、税金の負担を軽減するというものです。

とくに、不動産投資は、減価償却費を活用した節税対策が有効であると言われています。下記のとおり、各物件タイプで法定耐用年数が定められており、物件価格の目減り分を複数年に分けて経費に計上できます。

建物構造法定耐用年数
木造建築
22年
木造モルタル造
20年
RC(鉄筋コンクリート造)
SRC(鉄骨鉄筋コンクリート造)
47年
レンガ造・石造・ブロック造
38年
重量鉄骨
34年(4mm以上の場合)
軽量鉄骨
27年(3mm超4mm以下の場合)

3.不動産収入を得ながら資産運用に活かせる

会社経営者として働いている方でも、引退を迎える時が来ます。引退したあとは給与自体がなくなる可能性もあり、計画的な資産運用が求められます。

不動産投資は、家賃収入という形で経営者時代から継続的な収益を狙えます。また、長期投資の1つであり、不動産価格が上昇した際に売却することでキャピタルゲインにも期待できます。

4.社宅として使い空室リスクを軽減できる

法人名義で不動産を所有し、福利厚生という扱いで社宅として活用する方法があります。従業員に対して住宅手当を支給する企業も多いですが、従業員にとっては課税対象となるほか、住宅手当はキャッシュアウトとなってしまいます。

そこで、法人名義で不動産を所有し従業員向けの社宅に利用すれば、福利厚生として経費に計上できます。従業員に住んでもらうことで空室リスクを防ぎやすくなるだけでなく、節税効果を狙えます。

5.相続時の税金対策につながる

所得税や住民税だけでなく、相続税も経営者にとって大きな税負担になり得ます。不動産投資は、相続財産の価値を計算する際に用いる「相続税評価額」が、不動産の時価よりも下回る(一般的に時価の7〜8割)ことから、相続税対策に有効であると言われています。

具体的には、時価3000万円の物件を相続するとき、固定資産税評価額に基づいて、2100〜2400万円ほどまで価値が下がる計算です。このように不動産という形で相続することで、納税額を軽減できます。

経営者が知っておきたい不動産投資の戦略

経営者が不動産投資を成功させるためにも、戦略を考えておくことが大切です。今後、資産運用や節税効果を狙う方、本業のリスクヘッジなどに活かしたい方は、不動産投資の戦略を把握しておきましょう。

資産運用や税金対策に適した物件を選ぶ

まずは、それぞれの目的に応じて、資産運用や税金対策に適した物件を選ぶことです。たとえば、これからのライフプラン実現に向けて不動産投資を行う場合、安定的に家賃収入を得られる不動産や、将来的に価格が値上がりしやすい不動産を狙うようにします。

また、税金対策が目的であれば、法定耐用年数が短い木造物件や、耐用年数自体を超過した中古の木造物件(法廷耐用年数×20%の年数で減価償却が可能)も候補に挙がります。

とくに、資産運用で不動産投資を考えている方は、日本国内の物件だけでなく、経済成長が続く新興国の物件にも注目してみてください。カンボジア国立銀行によると、2022年8月における首都プノンペンの住宅価格指数(RPPI)が、2020年基準で15.4%も上昇する結果となりました(※1)。今後、経済成長とともに不動産価格が上昇し、キャピタルゲインを狙った運用が可能です。

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可能な限り早く不動産投資を始める

不動産投資を検討している場合、可能な限り早く始めるようにしましょう。というのも、不動産投資は、中・長期的な価格変動を狙いキャピタルゲインを狙う資産運用方法であるほか、5年未満の保有期間で売却すると、譲渡税の優遇を受けられません。

また、会社経営者の方は、会社の業績によっては不動産投資用ローンの審査が難しくなることもあります。経営者をリタイアするまでの時間も限られているので、早めの段階で不動産投資を始めるようにしましょう。

不動産の所有者を選定する(個人・企業・法人化)

会社経営者が不動産投資を始める際には、「誰」が不動産を保有するかも重要です。具体的には、以下の3つのパターンを想定しましょう。

・経営者本人が所有

経営者本人が所有することで、会社の経営とは切り離された状態になります。個人で不動産投資事業を行い、節税対策や資産運用を進めていきます。

・経営者が代表である会社名義で所有

経営者本人が、代表である会社名義で不動産を所有する方法です。会社名義で保有し、本業の業績が振るわないときのリスクヘッジにつながるほか、社宅として活用することで税務上のメリットを得られます。また、会社の資産を不動産として保有することで、事業継承時の法人登記の手間を省けます。

・不動産投資事業専門の会社で所有

3つ目のパターンは、不動産事業専門の会社を設立し、保有する方法です。経営者本人の給与所得が「給与所得が900万円以上かつ、所有物件が黒字」である場合、最高税率が個人所得税(所得税率と住民税率で43%)よりも、法人実効税率(最大34.59%)の方が安く済みます。

つまり、経営者の所得が900万円を超えている場合、個人で不動産を所有するのではなく、不動産投資事業を法人化した方が節税効果を得られます。ただし、赤字の場合でも法人住民税が発生することや、長期保有による税率優遇を受けられないといったデメリットに注意が必要です。

不動産投資に強い仲介会社と進める

不動産投資は、物件を購入し、賃貸運用をしながらタイミングを見計らって売却するといったシンプルな資産運用方法です。しかし、収益が出にくい物件を購入してしまったり、売却のタイミングを間違えたりすると、想定していた収益を得られない可能性があります。

そこで、不動産投資に強い仲介会社に相談することが大切です。不動産仲介会社は、賃貸需要が高いエリアや、収益が安定して出やすい物件、不動産価格の上昇が見込める物件など、さまざまな情報を持っている場合があります。もちろん、投資家本人が不動産投資に関する知識を身につける必要もありますが、個別相談や、オンラインセミナーなどを活用してみましょう。

経営者が不動産投資を始める際の注意点

経営者が不動産投資を始めるにあたって、注意しておきたいポイントがあります。失敗を避けるためにも、どのような点に注意するべきか確認しましょう。

業績によっては融資を得られない場合がある

1つ目に注意しておきたいのが、会社の業績によっては、経営者本人が不動産投資用ローンを借り入れられない可能性があることです。そもそも経営者は、サラリーマンのように「給与」をもらうのではなく、「役員報酬」による収入です。

金融機関にもよりますが、会社経営者や自営業者は収入が安定しにくい身分だと見られる可能性があります。業績が悪化していくと、さらに審査が厳しく行われることも考えられます。

本業の資金調達に悪影響を及ぼす可能性がある

不動産投資では、自己資金以外にも不動産投資用ローンを使いながらレバレッジ効果を高められます。しかし、経営者が不動産投資用ローンを借り入れすぎてしまうと、本業の資金調達に悪影響を及ぼしかねません。

一般的に、金融機関ではローンの審査を行うときに、収入に対する毎月の返済額の割合が高いと、それ以上の融資を行わないことがあります。不動産投資用ローンの借入額を増やしすぎてしまうことで、本業の資金調達に影響が出ないように注意しましょう。

損失が出ないように気をつける

不動産投資は、税金対策や資産運用に有効な方法ですが、損失が出ないように注意しなければなりません。あくまでも投資の一環であるため、利益が出ることもあれば、損失を被る可能性も十分に考えられます。

損失が出ないようにするためには、事前にキャッシュフローのシミュレーションを行うことや、資金的に無理のない運用を心がけることが大切です。生活資金と投資用の余裕資金を分けて、ある程度損失が出ても最小限の影響に留められるように準備しましょう。

オーナーチェンジ物件には注意が必要

オーナーチェンジ物件とは、入居者はそのままの状態で、不動産の所有権を移転させることです。物件のオーナーのみが変わるという取引で、入居者がいれば、そのまま家賃収入を得られます。

しかし、オーナーチェンジ物件は、物件購入前に部屋の状況を確認できないことや、入居者属性の情報を得られにくい点に注意が必要です。新たに入居者を探す手間を省ける一方で、トラブルには気をつけなければなりません。

まとめ

会社経営者にとって、不動産投資は節税効果を狙えることや、本業のリスクヘッジにつながるなどのメリットがあります。また、経営者をリタイアしたあとの生活を見据えて、資産運用方法にも活用できます。

ただし、経営者という立場上、不動産投資用ローンの借り入れに苦戦することも想定されるので、ある程度の自己資金も用意することを推奨します。また、不動産投資に強い仲介会社を探し、積極的に相談しましょう。

※1:カンボジア国立銀行「経済・金融政策(2022年8月) 」(PDF11ページ目)