不動産投資では、修繕費や手数料といった費用が発生しますが、経費に含まれるのかどうか気になる方も多いのではないでしょうか。一般的な事業と同じように、不動産投資における費用のなかには、経費として計上できるものがあります。

しかし、なかには経費に含めることが認められない項目もあるので注意が必要です。今回の記事では、不動産投資で経費に含まれる項目と、含まれない項目をそれぞれ紹介します。

不動産投資で経費に含まれる項目

不動産投資で経費に含まれる項目を紹介します。不動産取得に関する税金から、保険料、通信費、旅費・交通費など、さまざまな項目で経費計上が可能です。

 1.不動産取得・保有に関する税金

不動産を購入した際に課せられる不動産取得税、印紙税、登録免許税は経費として計上できます。また、不動産を保有している間、毎年課せられる固定資産税や都市計画税も経費の対象です。

自動車税と自動車重量税も経費計上が可能ですが、不動産投資に関連する部分のみである点に注意してください。私用に当たらない利用のみを按分したうえで、経費に計上する必要があります。

・不動産取得税

・印紙税

・登録免許税

・固定資産税

・都市計画税

・自動車税、重量税(不動産投資に関連する部分のみ)

参考記事:不動産投資で税金対策は可能?節税の仕組みをわかりやすく説明

2.保険料

不動産投資で購入した物件に対して火災保険や地震保険に加入した分に関して、保険料を経費に含ませられます。また、孤独死保険の保険料も経費の対象です。

なお、不動産投資でローンを組むときに加入する団体信用保険の保険料も、ローンの金利に上乗せする形で経費化できます。一方で、社会保険料は、不動産ではなく個人に課せられる保険料であるため、不動産投資の経費には含まれません。

3.減価償却費

減価償却費とは、不動産や車といった固定資産を保有するのに要した費用を法定耐用年数で分割した金額です。以下表のとおり、木造建築は22年、RCC構造は47年、重量鉄骨(4mm以上)は34年といったように法定耐用年数が決められています。

不動産の購入費用を減価償却という形で経費に計上し、節税対策を行えます。ただし、土地については減価償却が認められないので注意しましょう。

建物構造法定耐用年数
木造建築22年
木造モルタル造20年
RC(鉄筋コンクリート造)
SRC(鉄骨鉄筋コンクリート造)
47年
レンガ造・石造・ブロック造38年
重量鉄骨34年(4mm以上の場合)
軽量鉄骨27年(3mm超4mm以下の場合)

4.修繕費

修繕費についても、不動産投資の経費に認められます。たとえば、保有している物件の老朽化が進んでいる際に、購入当初の状態に修繕する目的で発生した費用は経費として計上できます。

また、入居者が退去するときの清掃費、リフォーム費に加え、設備トラブルの修理なども経費に含まれます。ただし、修繕費用が20万円を超えた場合や、機能向上を目的とした設備投資費用は、資本的支出という形で減価償却の対象となります。

5.物件の管理委託料

管理委託料とは、購入した不動産を管理会社に委託する際に発生する費用です。家賃集金や入居者募集、入居者対応業務などを管理会社に依頼した費用に関しても、不動産投資の経費として計上できます。

6.ローンの金利

不動産投資を始める際に金融機関でローンを組んだ場合、ローンの金利についても経費として計上できます。また、ローンを組んだときに発生する手数料も経費の対象です。

注意しておきたいのが、建物部分と土地購入に関するローンの金利は経費の対象ですが、ローンの元金部分は経費に含まれません。

7.通信費(パソコン、スマホ)

不動産投資の情報を入手したり、不動産仲介会社と連絡したりしたときに発生した通信費は、経費に含められます。また、情報入手や連絡手段に利用するパソコン・スマホ、不動産投資に使用するソフトやアプリの購入費用も経費として計上できます。

ただし、通信費や通信媒体の購入費用などを経費に計上する際には、不動産投資の費用分を按分しなければなりません。不動産投資に使った部分のみを計算して経費に計上します。

8.司法書士・弁護士・税理士への相談料

不動産の登記手続きや、不動産投資全般の確定申告についてアドバイスをもらうときに、司法書士・税理士に相談することがあります。この相談料に関しても、不動産投資の経費として計上できます。

また、入居者が家賃を滞納しているときや、トラブルに見舞われたときに、弁護士に相談したときの費用も経費の対象です。専門家への相談料、依頼料が経費に認められるので、不動産投資初心者の方でも安心して行えます。

9.旅費・交通費、交際費

不動産投資を目的に、旅費・交通費が発生した場合も経費に計上できます。たとえば、購入を検討している物件を内覧するために、電車・バスといった交通機関を利用した場合、交通費が経費に認められます。

さらに、宿泊が必要な遠くの物件を内覧するという場合には、ホテルの宿泊費に関しても経費の計上が可能です。内覧だけでなく、売主との交渉、契約手続き、不動産仲介会社への訪問なども経費に計上できます。

10.不動産投資の勉強費用

不動産投資を始めるにあたって、教材を買って勉強したり、不動産仲介会社のセミナーに参加したりする際に、勉強費用が発生します。この不動産投資成功に向けた勉強費用も、経費として計上できます。

とはいえ、不動産投資に無関係な勉強費用は、経費に計上できません。また、後述しますが、不動産投資に関する資格の取得費用も経費に含められない点に注意しましょう。

不動産投資で経費に含まれない項目

不動産投資に関する多くの費用が経費に計上可能である一方で、経費に含まれない項目も存在します。経費として計上できない項目を、誤って経費として計上しないように注意してください。

1.所得税・住民税

所得税・住民税は、不動産投資で経費に計上することができません。不動産取得税、印紙税、登録免許税、固定資産税などと異なり、所得税と住民税は不動産投資と関係なく発生すると判断されるためです。

ただし、所得税・住民税を経費に含めることはできませんが、減価償却費の経費計上によって、所得税・住民税を節税できます。

2.スーツ代

不動産会社や金融機関の担当者に会う際に、スーツの着用やビジネスバッグを持参するケースがあります。しかし、これらのファッションアイテムに関しても、経費に計上することはできません。

これは、不動産投資と直接的な関係性がないのが理由であり、仮に高価なスーツを不動産投資用に購入したとしても、経費に含まれない点に注意しましょう。

3.反則金

不動産投資に関連する反則金は、経費に含めることはできません。たとえば、金融機関に行く際に、道中でスピード違反で反則金を支払わなければならなくなった場合、この反則金を経費に計上することは不可です。

自動車関連費用としては、駐車場代やガソリン代などは経費に認められるものの、反則金・罰金の経費計上が認められない点に気をつけましょう。

4.福利厚生

ジムの会費や、不動産投資以外の旅費といった福利厚生に関しては、経費として計上できません。ただし、不動産事業を法人で行い、親族以外の従業員がジムや旅行で福利厚生を享受した場合には、経費に認められる可能性があります。

1点注意しておきたいのが、法人ではなく個人事業主の方は、福利厚生費は経費に認められません。

5.資格の取得費用

勉強費用の項目でも解説したとおり、不動産投資の資格取得費用は経費に計上できません。不動産投資の学習を目的に、宅建士やマンション管理士、賃貸不動産経営管理士などの資格を取得しても、一連の費用が経費に認められない点に気をつけてください。

資格取得費用が経費に認められないのは、あくまでも個人のスキルアップが目的であり、不動産投資には関係性がないためと言われています。

不動産投資で経費にする際のポイント


最後に、不動産投資で経費の計上を行う際に、知っておきたいポイントを紹介します。経費にするための方法や、確定申告を済ませることなど、5つのポイントを押さえましょう。

レシートや領収書などを保管する

不動産投資に関する費用を経費として計上する際には、レシートや領収書の保管を忘れないようにしてください。万が一、受け取り忘れると、経費に計上することができなくなる恐れがあります。

また、経費として計上した項目に関するレシート・領収書は、一定期間の保管が義務付けられています。個人事業主であれば青色申告で7年、白色申告で5年、法人は原則として7年保管する必要があります。

海外不動産も一部経費が認められる

これまでは国内不動産の経費について解説しましたが、海外不動産に関しても一部の費用が経費に認められます。国内不動産と同様に、海外不動産でも物件の修繕費、管理費、支払金利、火災保険などは、経費として計上できます。

しかし、令和2年度の「税制改正大綱」により、海外不動産で生じた減価償却費の計上が認められなくなりました。とはいえ、新興国を中心に続く経済成長に伴い、不動産価格も上昇しているので、高い投資の効果を得られます。

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車の購入費や維持費は按分で計上する

不動産投資を目的に、車の購入や維持を行う場合、生活で使用している分とは別にして計上しましょう。私的な利用を含めた状態で経費として計上すると、経費に認められなくなる可能性があります。

按分で計算する際には、一定期間内における私的利用と不動産投資目的での割合を把握しておくことが大切です。不動産投資分の費用を証明するものとして、事実関係が掲載されている書類や、ドライブレコーダーを活用する方法も検討してください。

確定申告を忘れないように済ませる

不動産投資分の経費を申請するためには、確定申告を済ませましょう。確定申告書類の決算書に、必要経費の項目があるので、1つ1つ項目名と金額を記入していきます。

また、不動産所得に関する確定申告を行うときには、源泉徴収票、不動産売買契約書、譲渡対価証明書、売渡精算書、賃貸契約書、家賃送金明細書といった書類を準備してください。確定申告期間に慌てないように、前もって準備することを推奨します。

経費に計上する前に専門家に相談する

不動産投資分の経費を計上する前に、専門家への相談も検討しましょう。上記で紹介した項目以外にも、経費に含められる費用や、経費に含めない費用があります。自身だけでは判断しにくい項目もあるので、確定申告を行う前に税理士にも相談することを推奨します。

参考記事:不動産投資の相談先おすすめ6選!相手を選ぶポイントや注意点とは?

まとめ

一般的な事業と同じく、不動産投資でも一部費用項目について経費が認められます。不動産取得税や固定資産税といった各種税金、ローンの金利、通信費なども経費に含められることから、節税対策にも活用できます。

ただし、不動産投資に関連する費用項目であっても、経費として計上できないことがあるので注意してください。税理士や不動産仲介会社の専門家にも相談し、間違いがないように経費を計上しましょう。