法人企業を経営するなかで、キャッシュフローを安定させることが重要となります。しかし、毎年多額の税金が発生し、会社に残るお金が減ってしまうことに悩まれている経営者の方も多いのではないでしょうか。

今回の記事では、法人の経営者に効果的な税金対策を10選紹介します。また、税金対策を行うにあたって、注意しておきたいポイントもまとめているので、個人事業主や中小企業の経営者の方はぜひ参考にしてみてください。

経営者が知っておきたい主な税金の種類

経営者に効果的な税金対策方法を紹介する前に、経営者自身がしっておきたい税金の種類や、各税金の概要を紹介します。毎年納税している税金について、改めてどのようなものなのかを把握しましょう。

経営者に効果的な税金対策方法を紹介する前に、経営者自身がしっておきたい税金の種類や、各税金の概要を紹介します。毎年納税している税金について、改めてどのようなものなのかを把握しましょう。

個人所得税

個人所得税は、経営者個人に課せられる税金です。その年の1年間(1月1日〜12月31日)に発生した個人所得に対する税金で、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得など10種類の所得に分けられます。

とくに、給与・役員報酬に対する給与所得や配当所得、不動産運用に伴う不動産所得などが、経営者にとって関連性の高い個人所得税です。所得に応じて税率が定められており、最大税率は45%で、このほかにも住民税率の10%が課せられます。

法人税

法人税は、各事業年度における所得金額を、事業年度の利益から損失額を控除した金額に対して課される税金です。上記の個人所得税よりも、税率の上がり方が緩やかであり、税率は資本金1億円以下(中小法人)であれば最大でも23.2%(法人実効税率は最大34.59%)となっています。

法人住民税

法人住民税は、個人の住民税と同様に、会社を登記している自治体に対して納める税金です。なお、法人住民税は、均等割と法人税割から構成されており、後者の法人税割税率は各自治体で異なります。

資本金が1000万円以下の会社だと、均等割は年間で7万円(従業員50名以下の場合)とされています。また、均等割の分に関しては、法人が赤字の場合でも納税しなければなりません。

法人事業税

法人事業税とは、事業所を有する各都道府県で事業を行っていることに対する地方税であり、法人住民税と同時に納税します。法人の事業内容や資本金額、年間の所得額などに応じて税率が変動するので、各自治体にて確認しましょう。

固定資産税

固定資産税は、1月1日時点で会社・個人が保有する土地や建物、一定金額以上の償却資産に対してかかる税金です。固定資産税の範囲は広く、マンションや戸建て、田、畑、山林などに加え、法人の場合はパソコンやコピー機、その他機械設備も含まれます。

経営者に効果的な税金対策10選一覧

それでは、経営者に効果的な税金対策10選を解説します。各税金対策方法をチェックしたうえで、どの方法であれば節税可能なのかを確認してください。

1.役員報酬を利用する

法人税の節税対策として、役員報酬の利用が挙げられます。役員報酬が税金対策に効果的な理由は、税務上損金としての計上が可能であるためです。

損金とは損失であり、経費のように利益から差し引くことで会社の所得を減らせます。つまり、課税対象額が減るので、結果的に法人税の減税を狙えます。

ただし、損金として扱うためには、毎月同額の報酬を支給しなければなりません。決算間際に利益が出たからといって役員報酬を支給したり、業務実態がない役員に報酬を支給したりすると、税金対策として無効になる可能性があります。

2.決算賞与を利用する

決算賞与は、決算の時期に従業員に対して支払うボーナスのことです。税制上のメリットを得られるほか、従業員のモチベーション向上にもつながります。ただし、以下の点に該当するか気をつけてください。

・翌事業年度の最初の1ヶ月以内に支給すること

・事業年度終了までに従業員全員に賞与額を伝えること

・決算賞与の額を未払金として経費に計上すること

とくに、最初の「翌事業年度の最初の1ヶ月以内に支給すること」に関しては、仮に1ヶ月以内に決算賞与の支払わないと、決算賞与は経費として認められなくなる場合があります。

3.不要となった固定資産を処分する

固定資産税の節税を行うには、会社で不要となった固定資産を処分してしまうことも重要です。とくに、金額が高い固定資産の処分は、固定資産除却損として長期的な節税効果を得られます。とはいえ、固定資産税を節税するために、不要でないものまで処分しないように注意が必要です。

4.中古車を購入し減価償却を活用する

会社で中古車を購入し、減価償却を活用することで法人税の節税を狙えます。自動車や不動産などは耐用年数が定められており、購入費用と耐用年数を照らし合わせながら減価償却として計上できます。

また、車の場合、新車よりも中古車の方が節税効果を高められる可能性があります。これは、新車の耐用年数が6年であり、購入費用を6年間分割しても節税効果をあまり感じられないためです。

一方、中古車の耐用年数は、「中古車の耐用年数=(法定耐用年数-経過年数)+(経過年数×0.2)」の計算式が使われます。たとえば、4年落ちの中古車の場合、計算結果が2.8年となり、端数は切り捨てた2年が耐用年数となります。

また、「定額法」、「定率法」のいずれかで計算することで、減価償却の年数が異なってきます。まず、定額法は、毎年同じ金額で減価償却する方法で、4年落ちで300万円の中古車の場合は、2年間で1年ごとに150万円を減価償却していきます。

一方、定率法は、定額法で計算した償却額を2倍(200%)で計上します。つまり、定率法で計算すると、4年落ちの300万円の中古車を1年間で300万円減価償却することが可能です。

5.不動産投資を始める

不動産投資は、法人税の節税に効果があります。上記で解説した車と同様に、不動産にも構造別に耐用年数が定められており、減価償却分を計上しながら税金対策を行えます。

また、海外不動産を所有する場合、外国税額控除制度を用いることで、現地の国と日本における税金の二重納税を防げます(租税条約を締結していることが条件)。東南アジアのように経済発展が続いている国の不動産を購入し、投資先国と日本における二重納税を防ぎながら、家賃収入やキャピタルゲインを狙えます。

【無料ダウンロード可能】18ヶ国の不動産を徹底比較!海外不動産比較ガイド

6.出張手当を活用する

取引先や新規顧客を開拓する際に、出張手当を活用して節税対策を行うことも可能です。役員報酬と同じように、損金として計上できます。また、出張手当を受け取った側である従業員は、個人の所得扱いにならないので、所得税・住民税の節税効果を得られます。

1点注意しておきたいのは出張手当を支給する際に、法人で旅費規程を作っておかなければなりません。あまりにも高額な出張手当を支給していると、税務署で否認される可能性もあるので注意が必要です。

7.福利厚生費を捻出する

福利厚生は、従業員のモチベーション向上に加え、損金として計上できます。税法でも、福利厚生費は、役員や従業員の福利厚生費を目的として、給料・交際費以外の間接的給付を行うための費用科目として含まれています。

さらに、会社でコンサートに行ったり、レクリエーション大会を開いたりする際の福利費用に関しても、経費への算出が可能です。ただし、従業員全員が福利厚生の対象であること、社会的に適当である金額の範囲内といった条件には注意しましょう。

8.法人用の生命保険に加入する

次に、法人用の生命保険に加入することです。生命保険に関しても損金として計上し、法人税の節税効果を期待できます。

また、生命保険への加入は、個人向けの生命保険と異なり、高額であるものの、万が一の場合には手厚いサポートを受けられます。生命保険解約時には、解約返戻金を受け取れるほか、商品によってはこれまで支払った保険料以上の解約返戻金を受け取り、資産を築き上げられます。

9.別の会社を設立する

既存の会社とは別に、新しい会社を別に設立することで税金対策を行えます。これは、資産管理を目的とした会社の設立で、節税効果を狙うという方法です。

具体的には、資本金1億円以下の法人の場合、年間800万円以内の所得に関して、法人税と事業税が軽減できます。また、交際費についても、年間800万円までの金額であれば全額経費として計上可能です。

とはいえ、別会社を設立したのが節税目的であると明確である場合は、税務署から否認を受ける可能性があります。

10.中小企業向けの共済を活用する

中小企業向けの共済とは、「中小企業退職金共済」、「小規模企業共済」、「経営セーフティ共済」の3つが主に挙げられます。共済に支払う掛金については、法人税の課税対象分から控除が可能で、税金対策に活用できます。

なお、会社の解散や倒産したときに共済の解約金を受け取れますが、所得に含まれるので、受け取るタイミングに注意しましょう。

経営者に税金対策が求められる理由

そもそも、経営者はなぜ税金対策が求められるのでしょうか。税金対策が求められる3つの理由を紹介します。

中小企業は大企業よりも資金調達が難しい

1つ目の理由は、中小企業は大企業よりも資金調達が難しい点です。大企業は社会的な信用力があるため、金融機関からも比較的容易に融資を受けられます。また、上場している企業であれば、株式を発行することで資金調達を行えます。

一方、中小企業は、大企業と異なり社会的な信用力も大きくなく、資金調達は簡単なことではありません。資金調達自体が難しい以上、税金対策をしっかりと行い、お金の流出を防ぐことが優先事項となります。

法人税や法人住民税は経費に含まれない

税金対策一覧でも解説したとおり、会社を経営していくなかで、さまざまな出費を経費として計上できます。しかし、法人税や法人住民税に関しては、いくら支払ったとしても経費に含まれることはありません。

つまり、多額の法人税と法人住民税を納税したところで、税金対策には全く意味がないということです。税金対策を始めるにあたって、間違った知識で対策を行わないように注意することが重要です。

中小企業は税負担が大きくなりやすい

一般的に、大企業よりも中小企業の方が税負担が大きくなりやすいです。「資本金1億円以下」の法人実効税率(法人税、地方法人税、住民税、事業税を合計した税率)は最大で34.59%です。一方で、「資本金が1億円を超える会社」の外形標準課税適用法人は、法人実効税率が最大でも30.62%となります。

もちろん、売上や資本金額が異なるので、比較すること自体が難しいものの、税率だけで3%もの乖離があります。また、資本金1億円を超える企業のなかには、海外進出している企業も多く、税金対策の幅を広げることが可能です。一方で、個人事業主や中小企業は、そもそもの資金が限られてしまうので、国外での税金対策も難しくなります。

経営者が税金対策を行う際のポイント

最後に、経営者が税金対策を行う際に注意しておきたいポイントをまとめます。法人の税金対策をうまく進めるにあたって、4つのポイントを押さえておきましょう。

過度な節税対策には注意する

1つ目のポイントは、過度な節税対策に注意することです。もちろん、キャッシュフローの安定化を目的に節税を狙っていくこと自体は重要です。

行き過ぎた出張手当や交際費の捻出、節税だけを目的にした別会社の設立などは、税務署からも疑いの目を持たれてしまいます。無用なトラブルを防ぐためにも、常識の範囲以内で節税対策を行うようにしましょう。

税金を繰延することによる効果は限定的である

一時的に税金の支払いを延長する繰延制度が設けられています。税金の支払いを延ばすことで、キャッシュフローの安定化を図れます。

しかし、繰延制度はあくまでも一時的に税金の支払いを止めるだけで、節税効果を得られるわけではありません。最終的には、自社に課せられた税金は納税しなくてはならないので、一時的なキャッシュフローの調整に過ぎない点に留意してください。

節税対策だけに専念しないように注意する

過度な節税対策だけでなく、節税だけに専念しないように注意してください。節税対策は、あくまでも収益に対する課税額を減らすものであり、お金がない状態で節税対策を行っても十分な効果を得られない可能性があります。

まずは、法人本来の目的である事業で収益を安定化させることが優先事項となります。その上で、収益を会社に残しておけるように、節税対策を行っていくようにしましょう。

弁護士や税理士など専門家からアドバイスをもらう

税金対策は一見簡単なように思えますが、複雑な要素が多く、経営者本人だけではうまく進められない可能性があります。また、帳簿に不明瞭な点があったり、明らかに税金対策を目的にした動きが見られたりすると、税務署から調査が入ることも考えられます。

このように、税金対策は、税務署から疑いの目を持たれるリスクに注意しなければなりません。弁護士や税理士といった税金の専門家にも相談し、法的に問題のない範囲で対策を行いましょう。

まとめ

個人事業主や中小企業の経営者にとって、税金対策は経営安定化に向けて重要な取り組みといえます。また、税金対策には、役員報酬・決算報酬の活用や、経営者自らが不動産投資を始めることなど、さまざまな方法があります。

しかし、過度に税金対策を行うことによる危険性にも注意しなければなりません。専門的な知識を有する弁護士や税理士、また不動産投資を始めるのであれば、不動産仲介会社にも相談しながら、税金対策を強化しましょう。