お金持ちやハイステータスの象徴とも言えるタワマンは、節税対策にも有効に活用できます。とはいえ、タワマンを使った節税対策は、最高裁で相続人が敗訴した判例もあるので注意が必要です。

今回の記事では、タワマン購入による節税効果や、節税が可能な理由について解説します。また、タワマン節税で注意すること、タワマン節税以外に効率的に行える節税対策も合わせて紹介するので参考にしてみてください。

タワマン節税とは?

タワマン節税とは、現金資産でタワーマンションを購入することで、相続税の負担を軽減する方法です。とくに、タワマンを活用した相続税の節税対策は効果が高く、現金を相続するよりも税負担の軽減が期待できます。

タワマンを購入することで狙える節税効果

現金資産でタワマンを購入することで、相続税の税金対策につなげられます。それぞれ、どのような理由から節税効果を狙えるのかを解説します。

相続税の対策

資産としてタワマンを保有することは、相続税における高い節税効果を狙えると言われています。というのも、預金、株式、現金といった金融資産を相続する場合、「時価」で相続税を計算することとなります。

一方で、不動産を相続する際には、時価ではなく、「相続税評価額」と呼ばれる指標が用いられます。基本的に、相続税評価額は時価よりも低く見積もられるので、時価で計算される金融資産よりも税負担を抑えることができます。

固定資産税の対策

タワマンは、固定資産税の対策にも効果的です。固定資産税には、200㎡以下の狭い土地には割引特例制度があり、タワマンも同様に適用されます。

通常、土地や建物の評価額に対して、1.4%の固定資産税が発生しますが、200㎡以下の土地にある住宅は課税額が本来の1/6になります。タワマンを含むマンションの土地所有面積は、マンションの敷地を戸数で割った面積を適用するので、割引特例制度を活用できるチャンスがあります。

タワマン購入で節税が可能となる仕組み

タワマン購入で節税が可能となる仕組みを細かく紹介します。時価と相続税評価額との乖離でなぜ節税が可能であるのか、タワマンで節税しやすい仕組みをまとめていきます。

1.タワマンの時価と相続税評価額の乖離を使う

亡くなった人の資産を相続する際に、3000万円と相続する人数に1人あたり600万円の基礎控除を差し引いたあとに、以下の税率と控除が適用されます。

法定相続分に応ずる取得金額税率控除
1,000万円以下
10%

3,000万円以下
15%
50万円
5,000万円以下
20%
200万円
1億円以下
30%
700万円
2億円以下
40%
1,700万円
3億円以下
45%
2,700万円
6億円以下
50%
4,200万円
6億円超
55%
7,200万円

たとえば、5000万円の現金を1人に相続する場合、5000万円−(3000万円+600万円)=1400万円となり、そこから15%の税率が課せられたあとに、50万円の控除を差し引いた「160万円」が相続税です。

一方、不動産を相続する場合、購入金額やそのときの時価ではなく、「相続税評価額」を適用します。なお、相続税評価額は、不動産時価の7〜8割ほどに見積もられることが多いです。

保有する物件の時価が5000万円で、相続税評価額が4000万円だったとします。上記と同様に1人に相続すると、4000万円-(3000万円+600万円)=400万円となるため、10%の税率を適用し、「40万円」の相続税を納めます。(※1000万円以下は控除なし)

また、タワマンは一般的な区分マンションよりも時価が高く、相続税評価額との乖離が大きくなり、より一層節税効果が狙えます。多額の現金を相続するよりも、タワマンを資産として相続したほうが節税効果を得られやすいということです。

2.高層階は相続税評価額との乖離が生まれやすい

タワマンのなかでも、高層階は相続税評価額との乖離が生まれやすいです。マンションでは土地と建物が別々に計算されており、総戸数が多いマンションほど、土地の評価額は低くなります。

また、建物部分に関しては、タワマンの低層階も高層階も面積が同じであれば相続税評価額も同じです。一方、低層階よりも高層階の方が不動産価格が高いので、不動産価格と相続税評価額との乖離を有効に活用することで、さらなる節税効果を生み出せます。

3.小規模宅地等の適用による節税を狙う

小規模宅地等の特例は、一定の要件を満たすと土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度です。以下のように、「特定居住用宅地等」、「特定事業用宅地等」、「貸付事業用宅地等」の3種類あります。

 用途限度面積減額率
特定居住用宅地等
住宅利用
330㎡
80%
特定事業用宅地等
事業利用
400㎡
80%
貸付事業用宅地等
不動産貸付業利用
200㎡
50%

たとえば、被相続人が住んでいた土地が住宅として使われていた土地で、評価額が1000万円、400㎡の広さだったとします。400㎡のうち330㎡が80%の減額対象となり、1000万円-(1000万円×{330㎡/400㎡}×0.8)=340万円が評価額となります。

タワマンも同様に条件を満たしていれば、相続税評価額の減額が可能です。ただし、限度面積があることや、各特例における条件を満たさなければならない点に注意が必要です。たとえば、特定居住用宅地等は、相続する相手が「被相続人の配偶者」、「被相続人の同居親族」といった条件に該当しなければなりません。

タワマン節税で注意すること

相続税や固定資産税の節税効果を得られやすいタワマン節税ですが、いくつかの注意点があります。タワマン節税そのものが使えなくなってしまう可能性もあるので、しっかりと把握をしておきましょう。

税務署から否認される可能性がある

タワマン節税で注意するべきこととして、税務署から税対策自体が否認される可能性があることです。これは、居住用や投資用としてではなく、タワマンを節税目的だけで購入することが理由とされます。

つまり、タワマンを購入する際には、節税目的でないことを明確にする必要があります。具体的には、相続税申告から5年間は税務調査が行われる可能性があるので、この期間はタワマンを保有し続けて売却しないことを推奨します。

タワマン節税に関する最高裁の判例に注意する

2022年4月に、タワマン購入による節税効果に関して、最高裁判所にて国税局側が勝訴したという判例があります。この「タワマン裁判」は、評価額と実勢価格が大幅に乖離していたため、国税局側が更正処分を行った結果、相続人が訴訟を起こした裁判です。

本記事でも解説したとおり、不動産の相続は相続税評価額に基づいて課税額が決まります。今回の件でも同様に相続人が相続税評価額を使って、不動産の相続税を申告しましたが、結果的に敗訴の形となりました。

相続人が敗訴した理由は、「相続税申告額が0円」であったことや、タワマン購入時に被相続人による金融機関からの借入金が「明らかな節税対策が目的」であったためです。タワマン節税は、節税効果が得られやすい一方で、あからさまな節税目的で進めることで今回のようなリスクが伴う点に注意が必要です。

今後相続税の税制改正が行われる場合がある

上記を含むタワマン節税が注目を集めるなかで、今後相続税に関する税制改正が行われる可能性にも注意しましょう。過去には、2017年にタワマンの固定資産税に関する税制改正がありました。

それまでは、低層階・高層階を問わず、専有面積が同じであれば固定資産税は同額でした。しかし、税制改正後は1階ずつ階数が上がるたびに、固定資産税の負担が約0.256%増えることになりました。

現時点では、相続税の評価額について税制が改正されていませんが、今後タワマン節税の効果が薄れるような税制改正が行われる可能性は十分にあります。税理士にも相談しながら、タワマンを活用した節税対策を進めるようにしましょう。

不動産投資で節税効果を効率的に狙う方法

タワマン購入による固定資産税や相続税の対策が難しくなってきているなかで、効率的に節税効果を狙える方法を把握しておきましょう。節税効果が期待しやすい4つの方法を紹介します。

配偶者の税額軽減制度を使う

配偶者の税額軽減制度とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、「1億6000万円」と「配偶者の法定相続分相当額」のどちらか多い金額までは配偶者に対して相続税が課せられない制度です。

たとえば、2億円の資産を持っている相続人が亡くなり、配偶者とその子どもに1億円ずつ相続したとします。1億6000万円よりも低いことから、相続した1億円には税金が課せられないということになります。ただし、相続税の申告期限までに分割されていない財産は税額軽減制度の対象にならないため注意しましょう。

不動産を5年と1日以上保有する

不動産は、5年と1日以上保有することで、譲渡税の節税効果が期待できます。以下の表のとおり、5年を境に不動産売却による収益に関して、所得税と住民税が大幅に減額されます。不動産投資で効率的に利益を確保したい場合には、5年と1日以上保有し、長期譲渡に適用されるようにしましょう。

 所得税住民税合計
短期譲渡(5年以下)
30.63%
9%
39.63%
長期譲渡(5年と1日以上)
15.315%
5%
20.315%

不動産投資事業を法人化する

サラリーマン大家として不動産事業を副業で行っている場合、法人化した方が節税効果を得られる場合があります。ただし、タイミングを間違えると節税効果を狙えない点に注意が必要です。

不動産事業を法人化する目安は、「給与所得が900万円以上かつ、所有物件が黒字」であることです。900万円以上の給与所得があるサラリーマンは、所得税率と住民税率は合わせて43%の税率が課せられます。

一方、法人実効税率は最大でも34.59%であり、上記の43%よりも安く済みます。もちろん、法人化に伴う費用が発生することや、長期保有による税率優遇を受けられないといったデメリットもあるので、十分に検討してから法人化しましょう。

海外不動産は外国税額控除制度を使う

海外に不動産を保有している方は、外国税額控除制度も活用してみてください。外国税額控除制度は、日本と租税条約を締結している国の不動産に関して、日本と海外現地における二重課税を防ぐ制度です。

日本国内での確定申告時に外国税額控除明細書を作成し、事前に海外で納税した分の税金を控除することで、海外と日本での二重課税を防ぎます。海外不動産の税金や節税対策については、下記の記事もご覧ください。

海外不動産の税金をパターン別に紹介!節税対策や確定申告の方法は?

まとめ

タワマン購入は、相続税や固定資産税の税金対策に有効とされています。とくに、タワマンで高層階の部屋を購入することで、時価と相続税評価額との乖離が大きくなり、さらなる節税効果を期待できます。

しかし、最高裁の判決でも相続人が敗訴したケースがあり、今後タワマンを活用した節税スキームが難しくなる可能性も注意しましょう。不動産の長期保有による譲渡税の節税や、海外不動産の外国税額控除など、ほかの節税方法にも注目してみてください。