不動産投資を始める方のなかには、節税対策を目的にしている方も多いのではないでしょうか。損益通算による所得税の負担軽減などの節税対策がありますが、相続税対策にも有効であると言われています。

本記事では、不動産投資による相続税対策や、なぜ相続税対策を行えるのかなど、全般的に解説します。不動産投資で相続税対策を行う際の注意点もまとめているので、参考にしてみてください。

不動産投資が相続税対策に効果的な理由

そもそも、不動産投資が相続税対策に効果的であるのは、どのような理由なのでしょうか。次の3つの理由を紹介します。

相続税評価額が不動産の時価よりも下がるため

1つ目の理由は、相続財産の価値を計算する際に用いる「相続税評価額」が。不動産の時価よりも下がるためです。不動産の価値を計る際に、土地は「相続税路線価や固定資産税評価額」、建物は「固定資産税評価額」を指標とし、時価の7〜8割となります。

たとえば、時価5000万円の物件を相続する場合、固定資産税評価額に基づき、3500〜4000万円ほどまで価値が下がります。また、結果として納税額の負担も軽減できます。このように、不動産の評価額が時価よりも下がることで、相続税対策につながるのです。

不動産投資用ローンの借入でマイナス資産を作れるため

不動産投資でローンを借り入れることで、相続税のさらなる節税効果を期待できます。というのも、ローンはマイナス資産として扱われるので、プラス資産との相殺が可能となるためです。

たとえば、1000万円の現金資産と相続税評価1500万円の物件を保有している人が、新たに2000万円の物件をフルローンで購入したとします。

このときの資産全体における相続税評価額は、「1000万円+1500万円−2000万円=500万円」です。もちろん、上記は極端な例であることや、相続するまでのローン返済額を含めていないため、正確な数値ではありませんが、ローンの借入で相続税の節税につなげられます。

小規模宅地等の特例適用で相続税評価額を下げられるため

小規模宅地等の特例とは、相続した土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度です。「特定居住用宅地等」、「特定事業用宅地等」、「貸付事業用宅地等」の3種類に分けられ、最後の貸付事業用宅地等は投資物件にも適用されます。

なお、貸付事業用宅地等を適用する場合、アパートやマンションなどの賃貸住宅の敷地のうち、200㎡までの部分について相続税評価額を50%減額できます。また、以下の条件に当てはまることが必要となるので注意しましょう。

・不動産賃貸業を親族が引き継ぎ、相続税の申告期限までその事業を営むこと

・相続した親族が、その土地を相続税の申告期限まで保有すること

不動産投資を活用した相続税対策方法

では、実際に不動産投資で相続税対策を行うには、どのような方法を取ればよいのでしょうか。4つのポイントを紹介するので、1つ1つ確認しましょう。

不動産を生前贈与する

生前贈与とは、不動産の所有者が存命している間に財産を家族に贈与することです。不動産オーナーが家族に不動産を継承する場合、生前贈与か、相続かを選びます。

いずれの場合でも、贈与税、相続税と税金が発生しますが、生前贈与の方が節税効果を狙える可能性があります。贈与税には年間110万円の基礎控除があり、控除内の贈与であれば贈与税が発生しません。

また、生前贈与を検討しておけば、あらかじめ各相続人にかかる相続税を計算し、結果的に贈与税・相続税どちらの方が負担が大きくなるのかを把握しておけます。節税効果としてはメリットは少ないものの、将来的な税負担を考えるきっかけとなります。

区分マンションを購入する

次に、区分マンションの購入です。不動産投資が相続税対策に効果的な理由でも解説したとおり、現金で資産を相続するよりも、不動産として相続した方が節税効果が高まります。

また、区分マンションを複数戸購入することで、分割相続にも備えられます。物件購入費や諸経費といった費用が発生しますが、相続税の節税効果に期待できます。

土地にマンション・アパートを建てる

物件購入による相続税の節税効果はもちろんのこと、既存の土地にマンションやアパートといった物件を建てることで、さらなる節税効果を狙えます。これは、土地の相続税評価額を減らせるほか、ローンによる借入金を相続財産からマイナスできるためです。

なお、賃貸用の物件として貸し出せば、借家権割合として全国一律30%の評価額減額が適用されます。一棟マンションや区分マンションを購入するよりも費用がかかる可能性がありますが、相続税の大きな節税効果につながる可能性があります。

不動産投資事業として法人化する

4つ目は、不動産投資事業として法人化することです。法人化すれば、法人の預金や法人の財産が相続税の対象とならないので、節税効果を期待できます。

また、個人の不動産相続と異なり、移転登記の手間が省けるようになるほか、登録免許税や不動産取得税の節税につながります。不動産のオーナーが給与という形で家族に資産を与え、早い段階で財産を分割することも可能です。

相続税対策に有効な不動産の特徴

相続税対策を行ううえで、不動産選びも重要となります。どのような不動産であれば、相続税対策に効果的なのかを解説します。

流動性が高い物件

相続税対策に効果的な不動産の特徴として、流動性が高い物件が挙げられます。流動性が低い不動産の場合、せっかく相続税の節税に成功したとしても、不動産を売却して換金する機会が少なくなるためです。

具体的には、都心部にある物件や、駅に近い物件、近隣に商業施設がある物件などが流動性が高いと言われています。また、物件価格が高すぎると、購入可能な人が少なくなり、流動性が低くなる可能性があります。

利回りが高い物件

ある程度の利回りを確保しておかないと、不動産投資自体が失敗してしまいます。仮に、利回りが期待していたほど高くない場合、キャッシュフローが悪化する危険性があります。

不動産投資向けに物件を購入する際には、表面利回りだけでなく、諸経費を盛り込んだ実質利回りの計算も忘れないようにしましょう。また、高い利回りを維持できるように、賃貸需要が高いエリアで物件を探すことも重要です。

時価と相続税評価額に乖離がある物件

最後に、不動産の時価と相続税評価額に乖離がある物件です。不動産投資における相続税対策は、時価と相続税評価額の開きを利用するので、両者の金額に乖離があるほど節税効果を期待できます。

なお、不動産の時価と相続税評価額の乖離は、物件ごとに異なります。たとえば、都心の一等地であれば、時価と相続税評価額の乖離が大きくなる場合があります。逆に、都心から離れた地方の物件は、時価と相続税評価額の乖離が小さくなりやすいです。

不動産投資で相続税対策を行う際の注意点

不動産投資で相続税対策を行う際には、いくつかの注意点にも留意しておきましょう。それぞれのポイントを踏まえながら、不動産投資で相続税対策を行ってください。

相続税の仕組みを理解する

相続税対策を行ううえで、相続税の仕組みを理解することが大切です。そもそも、相続税とは、亡くなった方の資産を、亡くなった方と特定の関係にある方が引き継ぐ際に納める税金です。

なお、現金や有価証券、自動車、貴金属、不動産など、あらゆる資産が相続税の課税対象です。また、相続税は、3000万円の基礎控除に加え、法定相続人の数ごとに600万円の控除が認められています。このような基礎知識を把握しておくことで、相続税対策をスムーズに進めやすくなります。

相続税申告から5年経つまでは売却を控える

不動産の相続を行ったあとは、相続税の申告から5年経過するまで物件の売却を控えるようにしましょう。この「5年」とは、過去5年間に渡って税務調査が行われる期間で、その期間は物件を保有していることが望ましいと言われています。

仮に、不動産の相続のなかで、疑わしき行為が見受けられた場合、相続税対策自体が無効となる可能性もあります。なお、とくに注意しておきたいのが、被相続人が亡くなってから5年ではなく、「相続税申告後の5年」である点です。

賃貸経営そのものに失敗しないようにする

相続税対策だけに気を取られずに、本来の目的である不動産投資を失敗しないように注意してください。相続税対策として不動産を購入したのにも関わらず、入居者が集まらなかったり、想定以上に利回りが出なかったりすると、キャッシュフローが悪化し、資産が減ってしまう危険性があります。

上述したとおり、賃貸需要が高いエリアを重点的に物件を探すことや、諸経費を加味した実質利回りを算出することなど、不動産投資の成功に向けて基本的なポイントを押さえておきましょう。

不動産の承継問題を事前に解決しておく

相続税対策を行う際には、事前に不動産の承継問題を解決しておくことも大切です。たとえば、相続人が複数いる場合、保有している不動産が1つしかないと、どのように遺産を分割するかで相続人同士が揉めてしまう可能性があります。

また、遺産を分割するために、相続後すぐに不動産を売却し現金化しようとしても、相続税を申告してから5年経過しないと、税務署から相続税対策が無効と判断されることも考えられます。被相続者が存命している間に遺産分割を整理し、相続後にトラブルが出ないように注意が必要です。

まとめ

不動産投資による相続税対策は、節税効果が出やすい方法です。物件の時価と相続税評価額の乖離を活かした節税効果だけでなく、不動産投資用ローンの借入額を活用した税金対策、小規模宅地等の特例など、さまざまな対策があります。

とはいえ、相続税対策だけに意識が向きすぎることで、不動産投資そのものに失敗しないように注意が必要です。本記事を参考にしながら、不動産投資の相続税対策を丁寧に進めるようにしましょう。

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