新興国の多い東南アジアの中でもフィリピンは、不動産投資先ランキングで常に上位を争う人気の高い国です。フィリピン不動産投資は、高い経済成長率を背景に高い利回りを実現する一方、新興国ならではのカントリーリスクもあるため、投資を検討する際は、その両面を把握しておく必要があります。この記事では、フィリピン不動産投資のメリット・デメリットを検証し、その上でリスクにどのように対処していけば良いかを解説していきます。
フィリピン不動産投資で要注意のリスクとは?
建物が完成しない竣工リスク
新興国の不動産投資では、完成前の物件(プレビルド)が投資対象となることがあります。プレビルド物件は安く購入することができますが、建設資金が不足して建設中に凍結されてしまうと、それまでに支払った購入金額は返金されません。安い価格で購入できる一方でリスクもあるというのがプレビルド物件の特徴で、日本国内ではあまりないタイプの商品ですので、注意が必要です。
不動産業者の見極めに要注意
プレビルド物件は、あまり知られていないデベロッパーや個人が施主・売主になっている物件ほどリスクが高い傾向にあります。そういった施主・売主は、経営が不安定で資金力に難があるため、先にマンションを販売して資金を集めながら建設を進めていくのですが、マンション販売が滞れば資金がショートし、建設が中止となります。大手デベロッパーは、財閥の傘下にいることが多いため、資金力・ブランドの点からもプロジェクトが途中で中止になる可能性はあまりありません。
しかし、大手デベロッパーの物件は価格が高くなる傾向にありますので、利回りの面では非大手の方が高利回りを見込みやすいと言えるでしょう。
賃貸できない空室リスク
高利回りが見込めるフィリピンであっても、空室では1円にもなりませんので、物件とユーザー(入居者)のミスマッチによる長期空室は何としてでも避けたいところです。フィリピンは物価が安いので、好立地の物件を安価に仕入れることができますが、入居者ニーズと合っていなければ意味はありません。購入にあたっては、物件の品質(立地、設備・仕様)・賃料・入居者ニーズの最適化を意識して物件を選定するようにしましょう。
また、フィリピンの賃貸仲介は不動産仲介業者や個人ブローカーによって行われているため、「suumo」のような不動産ポータルサイトや駅前で営業しているような不動産会社はありません。当然、日本の宅建業法のようなルールもありませんので、不動産会社や個人ブローカーが入居者を取り合うような状況となり、なかなか入居者が決まらないといったことも少なくありません。
物件価格が値下がりするリスク
フィリピンは高い経済成長率を持続し、インフレによる物価の上昇が続いていますが、立地や物件の条件によっては売却時の価格が購入時の価格を下回るケースがあります。これは日本国内でも同様ですが、物件価格は需給のバランスによって決まりますので、マクロがインフレ傾向にあったとしても、物件所在エリアの人気や競合する物件の動向(ミクロ)次第では購入時の価格を下回ることがあります。
また、プレビルド物件のように完成が近づくにつれて価格が高くなるような物件でも、完工間近になってもほとんど価格が上昇しないというケースもあります。物件価格はマーケット次第で変動しますので、リスクがあることはあらかじめ頭に入れておくようにしましょう。
フィリピン不動産投資のリスク対策
売主の分譲実績と検討物件の売行きに要注意
プレビルド物件における「竣工しない」リスクを回避するためには、フィリピン現地で分譲実績がある売主から物件を購入すること、当該物件の売れ行きをモニターすることが重要です。現地で知られているデベロッパーであれば、資金力が有ることに加えて、途中でプロジェクトが終了するといったブランド毀損につながるような対応は取りにくいはずです。
また、プロジェクトの売れ行きが伸びないことが原因で建設資金がショートし、プロジェクトが中止に追い込まれるというケースが多いので、物件の売出し時期や売れ行きはしっかりと確認しておく必要があります。
日系不動産業者を介して取引するのが安全
フィリピンで不動産投資を行う際は、言葉の壁や新興国ならではのリスクがあるので、現地に進出している日系の不動産会社に仲介を依頼するのが好ましいです。日系の不動産会社の中には、現地にオフィスを置かずに取引を行っているケースもありますが、現地にオフィスが無いと、継続的な情報収集もできませんし、緊急を要する場合も対応が難しくなります。
例えば、建設の進捗確認、賃貸物件であれば入居者・物件の管理などの場合、即応性が求められるケースがありますので、現地にオフィスを構えた日系の不動産会社の方が安心感があります。加えて、ある程度の規模感がある会社(信頼感のある会社)を選ぶことで、さらに安心感を高めることができるでしょう。
物件価格の周辺相場と賃料の妥当性を確認する
空室率が高い原因の一つとして、賃料が周辺相場と乖離していることが考えられます。その場合、賃料を下げることが解決策の一つとなりますが、収支のシミュレーションを崩すことになりますので、安易な値下げは避けたいところです。こういった値下げを避けるためにも、購入時の価格が周辺相場から見て適切かどうかをしっかりと見極める必要があります。相場よりも高い価格で購入すると、その分を賃料に転嫁させる必要がありますので、周辺の賃貸相場よりも高い賃料となり、結果として空室率が上昇しやすくなります。
また、保証賃料が設定されている場合がありますが、こちらも想定賃料がどのくらいで、想定賃料と周辺の賃料相場の乖離がどのくらいかを確認する必要があります。業者によっては、投資家を集客するために高い保証賃料を設定するケースがあり、実際に運用してみると賃料保証が受け取れないというケースも少なくありませんので、注意しましょう。
とにかく慎重に立地を見極める
不動産を検討する上で立地の見極めは最も重要な要素で、特に不動産投資においては立地が成否を分けると言っても過言ではありません。あなたの投資目的によって最適な立地は異なりますが、インカムゲイン目的であれば、長期的に賃料収入が確保できる立地である方が好ましいので、人口増加が期待できるエリアが適切です。キャピタルゲインが目的であれば、不動産価格が上昇傾向にあるエリアを選んで投資すると効果が出やすくなるでしょう。
フィリピン不動産投資はメリットとリスクのどちらが大きい?
賃貸需要のある物件は大きく値上がりする可能性も
フィリピン不動産投資のメリットは、人口増加率が高く、それに伴う経済成長率・インフレ率の高さによって、高い利回りが期待できることにあります。フィリピンの人口は、2014年に1億人を突破した後も増加が続いており、2091年まで人口増加が続くという予測もあるようです。全人口の平均年齢は20代前半で、日本のように働き手不足になるような心配はありませんので、長期的な経済成長が期待できるでしょう。物件によっては、さらなる需要の高まりによって大きく値を上げる可能性も期待できますので、需要の見込める売却しやすい物件を購入することが重要です。
まとめ
ここまで、フィリピン不動産投資のメリット・デメリットそれぞれを検証しました。新興国ならではの高い利回りを見込みやすい反面、新興国特有のカントリーリスクがあることがご理解いただけたかと思います。しかし、これらのリスクの多くは、フィリピン不動産のプロに仲介してもらうことで軽減できるものがほとんどです。特にフィリピン固有のリスクについては、現地に進出している比較的規模感のある(信頼感のある)不動産会社に仲介を依頼することで、安心感を持って進めていくことができるでしょう。フィリピン不動産投資は、現地におけるパートナー選びがポイントと言えそうです。
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