マレーシア不動産投資には、他の国と比較して海外送金の自由度や将来性の大きさなどにメリットがあります。しかし、どこのエリアでどの物件に投資すればいいのか、判断できないという人も多いのではないでしょうか。マレーシア不動産投資を検討するときには、政府が発表している統計の分析が役立ちます。この記事では、政府統計の分析に基づいて、投資に適したエリアや物件のタイプなどを解説します。
クアラルンプールにおける物件選びのコツは?
マレーシア不動産市場で最も多く販売されている物件は、首都のクアラルンプールに立地する物件です。クアラルンプールの不動産投資ではどのように物件を選べば良いのか、タイプ別・エリア別に解説します。
クアラルンプールの物件タイプ別取引数
クアラルンプールでは主にどのタイプの物件が取引されているのか、物件種別の取引数から分析します。2020年第3四半期におけるタイプ別の取引数は以下グラフの通りです。
※参照:マレーシア政府統計 https://napic.jpph.gov.my/portal/key-statistics
各タイプの定義は以下の通りです。ただし、マレーシアにおける用語の使い分けは、日本における不動産の定義ほど厳密ではありません。
用語 | 定義 |
Vacant Plot | 土地 |
Terrace | 戸建住宅 |
Semi-Detach・Detach | 区画割りされた駐車場付き建売住宅 |
Condominium / Apartment | 高層共同住宅 |
Cluster House | ゲート付きの一定区画内に建設された複数の戸建住宅 |
Town House | 低層共同住宅 |
Flat | 団地状の共同住宅 |
Low - Cost | 低所得者向け住宅 |
クアラルンプールでは、コンドミニアムおよびアパートメント(=高層共同住宅)の取引数が最多です。また、日本人向けに投資物件として販売されているマレーシア不動産も、大半はコンドミニアムです。タイプ別に取引数を比較すると、クアラルンプールでは、コンドミニアムに投資するのが最も一般的と考えられます。取引数の多さは物件の流動性に影響があり、投資終了時の売却可否につながるためです。
クアラルンプールのエリア別物件取引数
つづいて、物件のタイプをコンドミニアムおよびアパートメントに限定し、クアラルンプールをさらに細分化してエリア別の取引数を比較します。
※参照:マレーシア政府統計 https://napic.jpph.gov.my/portal/key-statistics
Kuala Lumpur Town Centreは、クアラルンプールの中でも、ムルデカ広場を中心とした一帯のことを指しています。細分化した統計を分析すると、コンドミニアムの取引数が多いエリアは、北側および西側のエリアに集中している様子が伺えます。Ampang・Ulu Kelang・Cherasなどのエリアは、クアラルンプールの東側に位置しており、西側エリアと比較するとその取引数はかなり少ないものです。クアラルンプールで不動産投資を検討するならば、西側のエリアに立地するコンドミニアムが妥当と言えます。
クアラルンプールの価格帯別物件取引数
クアラルンプールではどの価格帯の物件が特に流通しているのか、価格帯別の取引数を比較することで検証します。クアラルンプールの住宅市場における、価格帯別の取引数は以下の通りです。
※参照:マレーシア政府統計 https://napic.jpph.gov.my/portal/key-statistics
統計を検証すると、クアラルンプールではRM100万以上の物件も多数取引されていることがわかります。高価格帯の物件であっても、流通量が少ないゆえに出口戦略を描けないといったことはありません。ただし、RM40万以下の物件も取引数が多いことから、実需の主要価格帯は比較的低いとも考えられます。また、マレーシアでは住宅の供給過剰が続いているため、綿密な投資戦略が必要です。RM100万以上の物件は投資用物件として取引されている前提に立つのであれば、立地と品質を厳選して物件を選ぶことが重要になります。供給過剰状態のマーケットで高価格帯の物件に入居者を入れるためには、入居者のターゲットも絞る必要があるためです。
クアラルンプールの不動産投資では、現地の富裕層や外国人を入居者のターゲットとするのが妥当と考えられます。クアラルンプールに住む富裕層には中華系の華僑も多いものです。中華系の富裕層を意識した物件選びなどが、空室リスクを下げるためのポイントになります。
ジョホールバルにおける物件選びのコツは?
日本人向けにマレーシアの投資用物件が多数販売されているのは、クアラルンプールとジョホールバルです。ジョホールバルはクアラルンプールの南端に位置しており、シンガポールとの国境に接している都市です。ジョホールバルの不動産市場についてデータを分析します。
ジョホールバルの物件タイプ別取引数
ジョホールバルにおける、2020年第3四半期の物件タイプ別取引数は以下グラフの通りです。
※参照:マレーシア政府統計 https://napic.jpph.gov.my/portal/key-statistics
ジョホールバルでは、テラスタイプの住宅が最も多く取引されています。なお、その次に多いのは低所得者向けのローコストタイプです。ジョホールバルの不動産市場はクアラルンプールと大きく異なっている様子が伺えます。土地のことを指すVacant Plotの取引数も多いことから、ジョホールバルでは、土地や低層住宅が好まれると言えるでしょう。フラットやコンドミニアムなどの高層住宅も含まれるタイプは、取引数が少なめです。ジョホールバルで不動産投資を検討するのであれば、最終的な物件の売却も考慮すると、低層住宅を購入するのが安全と言えます。
ジョホールバルの価格帯別物件取引数
つづいて、ジョホールバルにおける、2020年第3四半期の価格帯別物件取引数は以下グラフの通りです。
※参照:マレーシア政府統計 https://napic.jpph.gov.my/portal/key-statistics
価格帯別に見ても、ジョホールバルの不動産市場はクアラルンプールと異なっている様子が伺えます。ジョホールバルではRM40万以下の物件に取引が集中しています。ジョホールバルではクアラルンプールよりも多くの物件が取引されているため、高価格帯の取引割合はかなり小さいものです。
ジョホールバルでも、外国人はRM100万以上の戸建住宅しか購入できないことを考慮すると、規制内容と不動産市場との間に乖離が起きていると考えられます。
マレーシアの人口分布
マレーシアでは首都圏に人口が集中しています。人口分布を分析すると、マレーシア不動産投資を検討するのであれば、クアラルンプールで物件を探すのが安全です。マレーシア政府の統計によると、2020年第4四半期時点で、首都のクアラルンプールを含むセランゴール州には、マレーシア全体の人口のうち約20%が集中しています。また、首都であるクアラルンプールの人口は、マレーシア全人口のうち約5.4%を占めています。ジョホールバルを含むジョホール州とセランゴール州とで人口を比較すると、ジョホール州の人口はセランゴール州の約58%です。マレーシアでは、首都圏と地方都市との人口差が大きい様子が伺えます。
まとめ
マレーシア不動産投資を検討するのであれば、首都のクアラルンプール西側でクオリティの高い物件を探すのが最も安全です。クアラルンプールでは、外国人投資家に対する最低購入価格の規制と、不動産市場で流通している物件の価格とに乖離がありません。
その一方で、地方都市に目を移すと、低価格帯の戸建住宅が多数流通しているため、不動産市場の実態と外国人投資家が取れる選択肢との間に違いがあります。不動産投資のリスクを下げるためには、不動産市場の実態を把握することが需要です。
マレーシア政府が発表している統計の分析は、各エリアが持つ特徴を把握するのに有効です。マレーシア不動産投資を検討する場合は、各種統計を物件・エリア選びの参考にしてみてください。