資産運用の選択肢の一つとして、海外不動産投資に注目が集まっています。日本国内は少子高齢化、人口減少、マーケットの成熟などにより、経済成長が鈍化しています。今でこそGDPは世界3位ですが、新興国に追いつかれるのも時間の問題かもしれません。不動産投資のリターンも見込みづらい状況。投資家たちの多くはそう考え、国内から海外不動産投資に切り替えているのです。ただ、海外不動産投資は大きなチャンスがある一方、リスクも伴います。メリット・デメリットをそれぞれ紹介しますので、参考にしていただければと思います。

1 海外不動産投資の4つのメリット

東南アジアをはじめとした新興市場、さらには先進国であってもアメリカやカナダなどの一部エリアでは、人口増加や経済成長が続いています。海外不動産投資によって、大きな利益が見込めることはもちろん、それ以外にもたくさんのメリットがあります。具体的に挙げていきます。

1-2 リターンが大きい

不動産投資には、家賃収入による「インカムゲイン」と、売却による「キャピタルゲイン」があります。新興国では、このどちらでも高い収益を見込めるチャンスがあります。

新興国では、人口増加や経済成長に伴い、住宅の需要が上がり続けているエリアがあります。また国民の所得も上がり、物価も上昇。家賃も上がっていくことが見込めます。不動産を購入し、家賃収入を得ながら、価格が高騰したら売却して利益を得られるのです。住宅需要の高いエリアで、大規模な開発が行われると、短期間で急激に不動産価値が上がることも。建設中に物件を買い、完成したら即販売して、大きな利益を得る投資家もいます。

1-3 リスクヘッジになる

さまざまな社会・経済的な要因で、日本は円安が進んでいくことが予想されています。日本の資産だけしか持っていないと、価値が下がっていく恐れがあります。これは非常にリスキーです。投資では「卵は一つのカゴに盛るな」という言葉があります。もしカゴを落としたら、卵がすべて割れてしまうからです。分散投資が重要になってきます。そういった意味で、海外不動産への投資は、リスクヘッジにもなるのです。

1-4 節税効果がある

不動産投資は、節税にもつながります。減価償却と言って、所有している不動産が経年劣化していく分を、経費として計上できるのです。これは国内・海外問わず同様です。減価償却以外にも、管理費や補修費、住宅ローンの金利なども経費になるので、不動産所得から差し引くことができます。会社から給与をもらったり、自営業をしたりしながら投資を行う場合、これらの経費を給与所得から引くことも可能なのです。詳しくは、不動産投資に詳しい税理士に依頼することをお勧めします。

1-5 小額から投資できる

国内で不動産投資をしようとすると、特に都心部や発展が見込める地域では、かなりの額の資金が必要になります。けれど新興国の、未発展エリアの物件になると、日本よりもはるかに安い金額で購入できます。元手が少なくとも、比較的ハードルが低くチャレンジ可能です、安く買って安定的な収益を得る、あるいは高く売る、というチャンスもあるのです。

2 海外不動産投資の4つのデメリット

海外不動産投資のメリットを挙げてきましたが、もちろんいいことばかりだけではありません。市場も法律も融資方法も異なる海外では、どのようなデメリットがあるのか紹介します。

2-1 為替変動リスクが大きい

海外不動産投資を行ううえで、最も懸念すべきことが、為替変動リスクです。国内では、社会や経済状況を把握しやすく、それに伴って為替がどう変動するか、比較的読みやすいもの。しかし、海外では簡単にいきません。当然ですが、為替レートが下がれば、得られるリターンも下がります。日頃から投資先の国のニュース、動向をチェックしても、国内に住んでいるとどうしても限界があり、それがリスクにつながるのです。

2-2 情報取得が難しい

海外で不動産投資を行うには、その国の法律や税金、不動産事情など幅広い知識が必要になります。例を挙げると、フィリピンで外国人は、土地の付いた住宅の購入・所有ができません。マレーシアでは、外国人が物件を買う際、最低購入価格が設定されます。利益を送金するのに制限があったり、高額な手数料がかかったりすることも。国ごとにこういったルールや取り決めが存在するのです。 

個人で勉強するのには限界があるため、不動産に詳しい弁護士や代理店など、専門家に依頼することが有効です。これは、詐欺被害の防止にもつながります。例えば海外の、住宅需要が見込まれるエリアで、大規模開発の物件に投資したとします。けれど、実際にはそういった工事計画はなかった……といった、最悪のトラブルに巻き込まれないよう注意が必要です。

2-3 融資が難しい場合も

不動産投資を行う場合、金融機関から融資を受けるのが一般的です。国内の場合、特に問題がなければ、物件価格の全額あるいは9割など貸し付けてくれることが多くあります。しかし、海外ではそういかないケースも。物件価格の50~60%しか借りられなかったり、自己資本比率が30%に達していないと融資ができなかったりすることもあるのです。また、日本より金利が格段に高い傾向にあります。

物件の価格が低いことが多いとはいえ、融資の条件やルールが厳しいことが多く、初期のハードルがやや高く感じてしまうかもしれません。

2-4 社会情勢の変化に左右されがち

海外では、その国独自のルールや規制があることを書きました。それらは、急に変化する可能性があります。特に新興国では、社会情勢が不安定な場合もあります。外交、紛争、暴動、テロなどさまざまな要因によって、投資家にも悪影響が生じることも。外国人による不動産投資が禁止されたり、財産を没収されたり、といったことが起こるリスクもゼロではありません。

そのため、成長が見込めることだけでなく、できるだけ政治や経済が安定している国・エリアを見極めて投資先を選ばなければいけません。

3 人気の投資国比較

3-1 マレーシア

工業化により、経済成長率は1990年代から年平均6%と、安定した数字を保っています。人口増加も今後も続いていく見通り。物価のも日本の1/3と非常に安価。

3-2 フィリピン

2050年には、東南アジア最大の経済大国に成長する見通しです。人口増や、核家族化による住宅需要が増え、特に首都マニアの空室率はわずか10%程度。平均実質利回りは約7%とアジア最高水準。ただ外国人は土地を購入できず、投資対象はコンドミニアムのみ。

3-3 シンガポール

経済、社会情勢ともに安定し、投資リスクも低い。外国人の投資規制も少なく、キャピタルゲイン、インカムゲインはどちらも非課税。ただ高額な物件が多く、融資比率も物件価格の50~60%程度。

3-4 タイ

自動車などの工業国として栄え、首都バンコクではここ5年で物件価格が50%以上も上昇傾向にある。GDPは2000年以降、3倍以上にも拡大している。ただ政治・軍事面が不安定で、外国人はローンを組めないデメリットが。

3-5 カンボジア

縫製業と観光業を中心に、1990年初頭から平均7%代の高い成長率を誇る。また平均年齢は23歳と若く、さらなる経済成長が見込めまれる。不動産情報の入手が難しいのが難点。

3-6 ハワイ

国としては成熟しているが、ここ30年で年平均4~5%と、物件は安定して価格上昇している。固定資産税や維持管理費が高額。

3-7 アメリカ

いまだに年300万人近くの人口増加が続く世界一の経済大国。物件の価格は高額だが、住宅価格は年平均4%上昇。空室率は5~8%と、高い住宅需要がある。全土で土地開発が進んでいる。

3-8 カナダ

政治的に安定しており、天然資源も豊富。人口の増加も続いており、土地開発も進んでいる。特にオンタリオ州は住宅需要が高く、リスクやコストを抑えて投資を行える注目エリア。

4 まとめ

いかがでしたか? 海外不動産を成功させるには、メリット・デメリットをきちんと把握したうえで、保有している資産・資金の状況や、投資によって何を実現したいか、を考えることがまず必要です。そして正しい情報を得て、ときに信頼できる専門家と組むことで、うまくいく確率は格段に上がるでしょう。あなたの海外不動産投資の成功を願っています!