国内の不動産投資では、マクロで見ると人口の減少により不動産の需要が低下していたり、築年数の経過による資産価値の低下が大きかったりするため、売却益を狙うのは簡単ではありません。一方、海外不動産投資では、人口の増加や経済の発展によって需要が高くなっている地域も多いため、家賃収入に加え売却益も期待できるというメリットがあります。

そこで今回は、日本にいながら海外に投資する方法4つと、海外不動産投資の利回りや特徴、リスクについても解説します。

1 海外不動産投資の魅力とは

通常、不動産投資と言えば国内を考える方が多いと思いますが、不動産ファンドを運営している国内機関投資家などは投資機会として海外不動産投資にもすでに目を向け始めています。海外不動産投資が注目される理由として、利回りの高さと売却益が期待できることが挙げられます。詳しく見ていきましょう。

1-1 海外不動産投資の利回り

国や物件にもよりますが、海外不動産投資の利回りは国内よりも高い傾向にあります。世界中の不動産情報を掲載しているGlobal Property Guideによると、東京(港区)の利回りは2.66%で、ニューヨークの2.91%、ロンドンの2.76%と比べて利回りが低くなっています。

アジア圏で比べても、インドネシアのジャカルタの7.09%、フィリピンのメトロマニラの6.13%よりも低いため、利回りの面では海外不動産投資に分があると言えます。今後ずっと利回りの高い状態が続くとは限りませんが、海外不動産投資では効率良く資産を増やせる期待があります。

1-2 売却益も期待できる

国内の不動産の資産価値は、2020年の東京オリンピックや2025年の大阪万博に関連する地域、再開発が進んでいる地域などでは上昇しています。しかし、少子化による人口減少で需要が低下しつつあるため、中長期的には資産価値の下落が予想されます。

一方、海外には、一部国内のように下落している国もありますが、人口の増加や経済の発展で上昇している国も多く存在します。そのような国を選んで不動産投資を始めれば、家賃収入だけでなく売却益も期待できます。

また、海外では、プレビルドと呼ばれる方式でも不動産を販売しています。プレビルドとは、工事に着手していない段階から不動産の売買契約を行い、数回に分けて売買代金を支払うという契約方法です。この方法では完成後よりも安くコンドミニアムを購入できるため、工事が完了した後に価値が上がりやすく、売却益が期待できます。

このように海外不動産投資は、利回りが高いだけでなく売却益も期待できるため、国内の不動産投資よりも魅力的なポイントがあると言えるでしょう。

2 海外不動産投資特有の3つのリスク

海外不動産投資には、利回りが高い、売却益も期待できるというメリットがありますが、元本が保証されていない資産運用である以上は、何かしらのリスクによって元本割れする可能性があります。

そのため、海外不動産投資で安定した利益を得るには、どのようなリスクを伴うのかを把握し、事前に対策を練ることが重要です。海外不動産投資特有のデメリットは以下の3つです。

  1. 為替変動リスク
  2. カントリーリスク
  3. 融資を受けられないリスク

それぞれのリスクについて詳しく解説します。

2-1 為替変動リスク

為替変動リスクとは、通貨の価値が変動することによって損益が生じるリスクのことです。国内の不動産投資の場合は、物件の売買や家賃収入の受け取りは全て日本円で行われます。しかし、海外不動産投資の場合には、現地通貨や米ドルといった外貨で決済が行われるため、為替変動リスクを伴います。

例えば、アメリカで不動産投資を始めるにあたり、1ドル100円の時に20万ドルの物件を購入したとします。その後、資産価値が上昇して22万ドルで売却した時に、1ドル90円になっていたとしたら、日本円での売却価格はどうなるでしょうか?

ドル建てでは購入時より高く売れているようでも、日本円に換算すると、実際には為替の変動によって2,000万円が1,980万円となり、20万円の損が生じたことが分かります。また同様に、家賃設定はそのままでも、為替変動で通貨の価値が下落した場合には円建てでの家賃収入は減少します。

為替変動リスクを少しでも抑えるには、通貨の価値が安定している国を選ぶことが重要と言えるでしょう。

2-2 カントリーリスク

カントリーリスクは、その国が有している固有のリスクを指します。例えば、地震や火山の噴火、テロや戦争が生じる可能性が高いなどです。このようなリスクの高い国では、実際にそれらの被害により建物が滅失し、安定した家賃収入が得られなかったり、資産価値が減少したりする可能性が懸念材料となります。

また、政治が安定していない国では、政権が頻繁に交代して法律や税制が変更になることもあります。例えば、いきなり不動産を没収される、税率の引き上げによって膨大な税金を納めなければならないなどの最悪の事態も想定に入ってきます。

これらのカントリーリスクは、国の政治情勢や地理条件などをあらかじめ確認することで、ある程度抑えられるでしょう。

2-3 融資を受けられないリスク

国内の不動産投資では、融資の返済能力がある、資産価値の高い物件であるといった条件を満たしていれば、金融機関の融資を受けながら不動産投資を始められる可能性があります。しかし、海外の不動産投資では、融資リスクが高くなるため、ほとんどの国内の金融機関は融資に対応していません。

仮に国内または現地の金融機関で融資を受けられても、返済期間が短い、融資額が少ない、金利が高いなど、融資条件が悪いケースが多く、キャッシュフローが悪化しやすくなるので注意が必要です。そのため、基本的には自己資金を準備してから海外での不動産投資を始めることをおすすめします。

3 日本にいながら海外に投資する3つの方法

国内で不動産投資を始める際は、不動産会社に相談する、自分で投資用物件を探すといった方法が挙げられます。では海外不動産投資を始める際にはどうすれば良いのでしょうか?以下の4つの方法が挙げられます。

  1. 現地の不動産会社を介して投資する
  2. 日本の不動産会社を介して投資する
  3. 個人投資家を介して投資する

それぞれの方法について詳しく説明します。

3-1 現地の不動産会社を介して投資する

国内に不動産会社があるのと同様、現地にも不動産会社があります。そこで挙げられるのが現地の不動産会社に不動産投資の仲介を依頼するという方法です。

現地の不動産会社では物件を豊富に扱っているため、より自分の理想に近い物件に出会えるというメリットがあります。しかし、日本語に対応している不動産会社はほとんどなく、日本のような細かなサービスが受けられないというデメリットがあります。そのため、現地に信頼できる知り合いがいる方や現地の言葉を使いこなせる人以外は、あまりおすすめできません。

3-2 日本の不動産会社を介して投資する

海外不動産投資が注目されるようになったため、日本の不動産会社でも海外の不動産の取り扱いが増えています。しかし、海外不動産を取り扱う不動産会社はまだ少数のため、まずは取り扱いのある不動産会社を探す必要があります。例えば、インターネットで検索する、セミナーに参加するなどです。

国内の不動産会社であれば日本語対応であるため、安心して任せられるというメリットがある一方、物件数が大きく限られるというデメリットがあります。

しかし、海外不動産投資では国によって法律や税制も異なり、また土地感にも乏しいと考えられることから、それらのハードルを外国語でのコミュニケーションで乗り越える難易度を考えると、国内の不動産会社に任せた方が安心できるでしょう。

3-3 個人投資家を介して投資する

海外不動産投資を行っている個人の中には、自身の経験を活かしてコンサルティングを行っている人もいます。そうした個人に任せることも選択肢の1つですが、正式な不動産会社として活動していない一個人であることを考えると、信頼性があるかどうかは難しい問題だと言えます。

これらを踏まえると、一定以上の規模があり実績の豊富な不動産会社から自分に合った会社を選ぶのが、海外不動産投資を始めるにあたって最も安心できる選択肢だと言えるでしょう。

4 まとめ

海外不動産投資は、家賃収入に加えて売却益も期待できるという特徴があります。そのため、海外不動産投資を検討する人も増えていますが、海外不動産投資には為替変動リスクやカントリーリスクといった特有のリスクを伴うので注意が必要です。

海外不動産投資では、特有のリスクをきちんと把握した上で、信頼できる国内の不動産会社に相談して取り組むと良いでしょう。