人口増加や経済成長が見込める海外での不動産投資に注目する方が増えています。しかし、「確実に値上がりする」と紹介された物件や国を選んだ結果、お金を騙し取られるなどの詐欺被害も実際少なくありません。

海外不動産投資では仲介会社や現地のエージェント、管理会社など複数のビジネスパートナーを必要とするぶん、様々な落とし穴が潜んでいるため、事前に学んで対応することが大切です。この記事では、海外不動産投資で詐欺に遭わないためのポイントを詳しく説明しますので、ご参考ください。

1 海外不動産投資で詐欺に遭う理由と主なケース

日本国内にいると海外不動産に関する情報は入手しづらいため、日本と異なる商慣習や法規制があることを把握せずに海外物件を購入するのには注意が必要です。

たとえば東南アジアのコンドミニアムは、外国人でも所有することはできますが、ベトナムのように「コンドミニアム1棟につき全戸数の3割まで」と保有制限を定めている国もあります。またマレーシアを除けば、東南アジアのほとんどの国で建物は購入できても、土地の所有権は取得できません。

このような情報は一般的には知られていないため、海外不動産投資での詐欺に利用されてしまうケースもあります。

「不動産投資をするなら経済成長の著しい東南アジアのほうがキャピタルゲイン(=売却益)を見込める」という話を聞いたことがある方もいるでしょう。確かに間違いではないですが、東南アジアでは既に投資物件の建設ラッシュが続いた結果、入居者がなかなか見つからないという過剰供給状態のエリアも出始めています。

海外不動産投資ではこのような情報格差を利用して、キャピタルゲインの見込めない物件を勧めてくる悪質な不動産会社も中にはいるため注意が必要です。以下では、海外不動産投資で詐欺に遭う事例をケース別に見ていきます。

1-1 投資会社に騙されるケース

「不動産投資会社が所有するプレビルドのコンドミニアムを通常よりも安く購入できる」と持ちかけられるケースです。

プレビルドとは、物件などの開発を手がけるデベロッパーが建設中のコンドミニアムを売り出す形式です。本来の販売価格よりも安く購入できるため、完成後に転売してキャピタルゲインを狙うプレビルド投資は、不動産投資会社や個人投資家にも人気の投資法となっています。

しかし、プレビルド物件の購入では、完成後の所有権が移転した時点でないと転売できないことに注意が必要です。つまり、完成前のプレビルド物件を売却する場合、正確には「コンドミニアムの購入権」を売却することになります。

ただし、デベロッパーによっては、物件の購入する権利の売買を禁止しているところもあります。購入権利の売買が禁止されていれば、購入を持ちかけられたプレビルド物件を取得することはできません。

このほかデベロッパーが資金不足によりコンドミニアムの建設を続けることが困難であることを知りながら、購入を勧めてくる投資会社もあります。いずれにしても、不動産投資会社からプレビルド物件の販売を持ちかけられる場合には、デベロッパーに直接、事実関係を問い合わせるなどの慎重な行動が求められます。

また、投資会社を名乗る業者から架空の海外不動産投資話を持ちかけられるケースもあります。神奈川県の消費者センターに寄せられた例では、見知らぬ業者から突然電話があり、「カンボジア土地使用権販売のパンフレットが届いているか」と聞かれました。

その業者いわく、カンボジア経済は右肩上がりであることから、土地使用権も価格上昇が見込めること、その販売業者では購入できないので代わりに購入して欲しいという内容で、さらに購入してもらえれば、業者がそのカンボジアの土地使用権を2倍の金額で買い取るという内容でした。

カンボジアは確かに経済成長を続けていることから、相談者は購入の申し込みを一旦したものの、家族からの助言もあって思い直し、消費者ホットラインに相談したという事例となります。

この詐欺にはパンフレットをポストに入れたとする業者と、カンボジアの土地使用権を購入したいと連絡をしてきた業者の2社が存在することが後になって判明しました。複数の詐欺師がそれぞれの役割を演じる劇場型詐欺の典型といえます。

前述した通り、カンボジアをはじめ東南アジアのほとんどの国では、非居住者の外国人は土地を所有することはできません。そのため、土地使用権という形で話を持ちかけてくること自体には、ある程度の現実味があります。また経済成長に伴い地価の上昇による恩恵を受けられるというスキームにも説得力があります。

ただし問題点は、その土地使用権を買い取るという業者を本当に信用できるのか、さらにそのような土地使用権の売買マーケットがどの程度あるのか、などになります。または投資話を持ちかけてきた投資会社の登記簿も調べるなど、最低限の事実関係の確認は必要です。

1-2 現地のエージェントに騙されるケース

海外不動産投資の物件選びでは、ロケーションなどに優れていれば建設段階から価格上昇が期待できるため、完成後に売却して利益を生み出すことを狙えます。ただし、「値上がりの期待できる新築コンドミニアムの売却を検討している人がいる」と話をもちかけてくるエージェントにも注意が必要です。

この時、まずは購入権の売却を検討している人が外国人なのか、それとも現地の人なのかを確認しなければなりません。東南アジアで新築のコンドミニアムを購入する際、外国人が購入できるのは物件全体の何割以内という規制があります。仮に外国人の購入枠が無くなったコンドミニアムだった場合、現地人が購入したものなら、外国人は購入することができません。

何としてでも売りたいエージェントは、それを承知の上で話を持ちかけてくることがあります。この場合、購入代金を振り込んだとしても物件が完成してから所有権が移転されることはありません。所有権が得られない以上、売却もできないので支払ったお金を取り返すのは難しいでしょう。

1-3 現地の管理会社に騙されるケース

海外不動産投資では購入後の物件管理に関するトラブルも少なくありません。特に現地の管理会社に騙される事例もあります。たとえば入居者をなるべく早く見つけると言いながら、実際には入居者募集を行わないケースです。

中には入居者を見つけるためには、最新の家電製品やその他設備が足りないからだと購入費用を請求するにも関わらず、実際には購入しないというケースもあります。特に、東南アジアでは投資用不動産を管理する会社の数自体が多くありません。そのため管理ノウハウも蓄積されておらず、日本の管理会社のように顧客目線でのサービスも期待できないでしょう。

あるいは登記を行うとしながらも実際には登記手続きを行っておらず、売却しようにもできないといったトラブルもあります。完成してから所有権を取得するまで必要以上に時間がかかるケースもあります。

このように不動産運用に関するマーケットが十分に整っていない東南アジアでは、現地の管理会社は慎重に選ばなければなりません。問い合わせをしてもなかなか返事がこないような業者には注意しましょう。

2 海外不動産投資詐欺に遭わないためのポイント

海外不動産投資では、投資対象国の法律や商慣習に関する情報収集が欠かせませんが、言葉の壁や時間的な都合から難しい方もいるでしょう。そこで海外不動産投資に関する詐欺に遭わないための基本的なポイントの3つをご紹介します。

2-1 投資先の会社を調べる

海外不動産投資は、投資先の国で直接物件を探して契約するのは難しいため、不動産投資会社を通すのが通常です。しかし海外不動産を取り扱う会社は、国内不動産会社とは違って一般的にはあまり知られていない企業もあります。そこでまずは、投資先の会社について調べるようにしましょう。

信頼できる会社の条件として、資本金の額や従業員の数、販売実績など客観的に判断できる材料はさまざまあります。また、会社自体が本当に存在するかどうかは、法人番号がわかれば国税庁の法人番号公表サイトで簡単に調べることも可能です。

海外物件の販売実績や取り扱い物件数に自信のある投資会社は、各種SNSやホームページを通じて積極的に情報発信をしています。調べてもこれらの情報が得られない場合は怪しいと見ることもできます。

また、投資先会社を調べる際にはどの国を得意としているかをチェックすることも大切です。海外不動産投資では刻々と変わる現地のリアルな情報も収集しなければなりません。そのため、情報収集には人的リソースが必要です。会社の規模が大きく従業員数も相当に多いのであれば、複数の国を担当することもでき、購入後のフォローまで手厚い場合もあるでしょう。

一方、十分なリサーチをせずに海外物件を紹介するだけで、そのあとのフォローもなく放置するような会社には注意が必要です。

2-2 良い不動産会社の見分け方

海外不動産投資の詐欺で見られるパターンとして、しつこく売り込んでくることがあります。会社名や氏名を名乗らずに何度も勧誘してくることもあるでしょう。なお、不動産販売を行う事業者を規制する宅地建物取引業法では、次のように悪質な勧誘行為を禁止しています。

・施行規則第16条の12


勧誘に先立って宅地建物取引業者の商号又は名称及び当該勧誘を行う者の氏名並びに当該契約の締結について勧誘をする目的である旨を告げずに、勧誘を行うこと

宅地建物取引業者の相手方等が当該契約を締結しない旨の意思(当該勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したにもかかわらず、当該勧誘を継続すること

迷惑を覚えさせるような時間に電話し、又は訪問すること

深夜又は長時間の勧誘その他の私生活又は業務の平穏を害するような方法によりその者を困惑させること


良心的な不動産会社は、法律で認められた範囲内で勧誘する上、そもそも優良な物件には投資家が自然と集まります。そのため度を越して勧誘してくる不動産会社は避けるようにしましょう。

このほか、不動産会社が主催するセミナーに参加することでも、主催社が信頼できるかどうかを見分ける判断材料にもなります。特に海外不動産投資のメリットばかりをアピールする会社には注意しましょう。

もともと海外不動産投資はリスク要因が多い投資法になるので、単に値上がりが期待できることや節税効果の高さなどの説明に終始するだけでは不十分と言えます。注意すべきリスクをしっかりと説明する不動産会社は信頼できるでしょう。

もしセミナーでリスクに関する説明が少ないと感じた場合は、積極的に質問をしてみましょう。たとえば供給過多になっている東南アジアの国で転売時に価格が下落するリスクはないのかどうか、似た条件の物件や同じエリア内の物件の売れ行き状況はどうなのかなどについて、客観的データを根拠にきちんと説明をしてもらえるかどうかを確認しましょう。

また、現地法人によるサポートを受けられる不動産会社を選ぶと購入後の物件管理もスムーズになります。海外不動産投資ではオーナーがこまめに現地へ足を運ぶことができないので、日本語ができるスタッフに対応してもらえると現地の詳細を把握しやすくなります。

2-3 海外不動産投資に関する知識を身につける

海外不動産投資で詐欺に遭わないためには、主体的に情報収集することが大切です。東南アジアで物件の値上がりによるキャピタルゲインを狙うなら、前述したプレビルド投資の基本的な仕組みから収益を出す方法や、外国人に対する購入規制、購入にかかる諸経費や税金を一通り把握する必要があります。

またはアメリカ本土やハワイで資産価値の高い物件を狙うなら、物件の選び方からインカムゲイン(=家賃収入)の確保の仕方、節税の仕組みなどを調べておきましょう。欧米不動産は節税効果の高さがメリットですが、価格自体が高額なので、資金調達で苦労するという側面もあります。

このような海外不動産投資に関する基本情報について知ることが、投資詐欺を回避する効果的な対策の一つになることも知っておきましょう。

3 まとめ

海外不動産投資では、値上がりを餌にした儲け話には注意しましょう。特に最近は複数の詐欺師が組織的に騙すケースが増えつつあります。一見しっかりしたように見える営業マンの話を聞くときでも所属先の会社を調べたり、身元確認をしたりする慎重さは持ち合わせたほうがいいでしょう。

また、複数の不動産会社のセミナーに参加すると、各会社の特徴や性格を比較することができます。どんな情報を伝えるのか、あるいは伝えないのかをチェックすることで、信頼できる不動産会社を見分けられるようにもなります。海外不動産の購入を検討されている方は、この記事を参考に、投資詐欺には注意してより良い物件を選びましょう。