資産形成の方法のひとつとして海外不動産投資の注目が高まっています。しかし、海外の不動産市場は日本国内の不動産市場とは事情が異なる点も数多く存在します。
この記事では、海外不動産投資を行う方が覚えておきたい注意点や海外不動産の正しい選び方について、ポイントを絞り込んで紹介しますので、ご参考ください。
1 海外不動産の特徴
まずは海外不動産のメリットについてご紹介します。
1-1 キャピタルゲインが狙える
海外不動産の大きな特徴のひとつは、キャピタルゲインが狙えることです。キャピタルゲインとは、物件の売却時に得られる利益をいいます。リーマンショック以降、日本では不動産価格の上昇が続き、2016年をピークに一旦高止まりの様相となってきており、今後も大きな資産価値の上昇は見込めないことからキャピタルゲインを狙うのは難しい状況が続いています。
しかし、海外では日本とは事情が異なり、経済成長や人口増加を背景に不動産価格の値上がりや為替レートの変化によってキャピタルゲインを狙うことができます。例えばアメリカやイギリスなどの先進国では不動産の中古市場が発達しており、富裕層からの購入ニーズも強いためキャピタルゲインを狙いつつ、賃貸運用によるインカムゲインを狙うことができます。
一方、東南アジアなどの新興国では、今後の経済成長や人口増を見込んで人気エリアで良質な物件を確保できればキャピタルゲインが狙いやすくなります。一部の新興国や都市部ではすでに投資物件の過剰供給状態となっているエリアもありますが、都市開発が計画されている郊外などエリアをある程度絞ることで、低価格でキャピタルゲインを狙える物件を見つけることもできます。
海外不動産投資では利回りも大切ですが、出口戦略となる売却の時まで想定して投資エリアや物件を選ぶことが重要です。
1-2 リスクヘッジになる
海外不動産投資を資産のリスクヘッジのために用いる方も増えてきています。日本は低成長が続いており、さらに人口減少時代に突入し始めました。現在、円は安定通貨と考えられていますが、一生安泰とは限りません。2008年のリーマンショック後には1ドル=87円程度になりましたが、現在は106円程度と10年で20%以上も安くなっています。
そこで海外不動産を購入して資産を海外に分散することで円高リスクを軽減することができ、為替レートの良い時に資産を売却することで為替差益を狙うこともできるようになります。また、日本においては大きな地震や台風などが増えており、自然災害による不動産価値の減損もリスクのひとつです。
日本の中古物件は、欧米と比べて資産価値の下落スピードが早く、経年により賃料の下落リスクや空室リスクなどが高まります。そのため、所有不動産を日本に一極集中させるのではなく、自然災害が少なく、資産価値が安定している国・地域などを選ぶことで災害リスクや賃料下落リスクなどの軽減にもつながります。
1-3 節税対策になる
高所得者層の方は、海外不動産投資を行うことで節税効果を狙うことも可能です。欧米などの先進国では日本と比較して、不動産の資産価値の計算における建物の割合が高い国があります。特に耐用年数を過ぎた木造築古の物件なら、最短4年で減価償却することができます。
不動産価値の減損を経費として扱う減価償却費が大きいほど、収入から経費を引いた所得を小さくすることができるので、海外不動産は高所得者の節税対策として使われることがあります。その他にも居住地や、税金の申請地を選ぶことによって、地域や税法の違いを利用した節税スキーム(計画・戦略の枠組み)を組むこともできます。
海外の税務に強い税理士や、海外不動産に強い不動産会社などに相談すれば、さまざまな事例から最良の方法を検討してくれるでしょう。
2 気をつけたい!海外不動産投資の注意点・リスク
海外不動産は日本国内の不動産よりも出回っている情報量自体が少なく、言語の違いなどもあるため、情報収集の難易度が高くなります。この点に関連したリスクや注意点についても詳しくご紹介します。
2-1 需要のないエリアを選んでしまう
海外不動産は国内不動産と比べるとエリアや物件の視察に時間やコストがかかるため、詳細を確認しないままエリアや物件を決定してしまうこともあります。しかし、需要のないエリアを選んでしまうと、入居者付けが進まずに家賃収入が発生しなかったり、手放したい時にも買い手が現れずいつまでも売れなかったりするケースも少なくありません。
また不動産会社に勧められるまま需要のないエリアを選ぶと、家賃は入らないにも関わらず物件の維持・管理のコストだけかかるというケースもあります。たとえば、国際的にも知名度のある「東京」であっても、その全エリアで不動産の需要があるわけではありません。
同様に、他国で「首都エリア」や「リゾートエリア」とされていても、そのエリアすべてが不動産需要のあるエリアであることを保証するわけではないため、エリア選びや物件の周辺付近についても十分に確認することが大切です。
また、購入時には人気エリアでも数年後に企業や大学が移転して不人気エリアになるケースもあります。購入後に長期で安定した需要が期待できるのかを不動産会社や現地視察などを通して確認する必要があります。
こういったエリア選びに関するリスクを軽減するためにも、現地の物件やエリア情報について正確に情報提供をしてくれるパートナーがいると良いでしょう。
海外不動産を扱う不動産会社の中には、現地法人を作ったり、現地のビジネスパートナーを組織化したりして国内の顧客に紹介している会社もありますので、どのような情報収集ネットワークを持っているかという点を会社選びのポイントの一つとしておくと良いでしょう。
2-2 未完成リスク
海外不動産投資で気をつけておきたいのが商慣習の違いです。海外では「プレビルド」と呼ばれる建物の完工前からの投資募集が一般的に行われています。これはデベロッパーが投資家を募り、集まった資金を使って工事を進めていくもので、建設の初期段階で投資をするほど完工後の市場価格よりも低い価格で物件を保有することが可能になります。
しかし、このプレビルド投資には、資金が集まらなければ資金不足によって工事が途中で止まり、建物が未完成のままになるリスクがあります。プレビルド物件ではこういったリスクを考慮し、実績や信頼のあるデベロッパーの案件なのか、募集状況や工事の進捗はどうなっているのかなどを事前によく確認しておくことが大切です。
また、たとえ工事が進んでいたとしても、完成するまでは収入がないことも注意したいポイントです。投資した後も物件からの収入がない状況がしばらく続くと負担も大きくなるため、お得だからと建設初期に焦って判断しないように気をつける必要があります。
このほかプレビルドでは物件の所有権を転売することも可能となっており、完成前には転売希望者が増えることがあります。希望者が過度に増えると、値崩れが生じることもあり、また売り手も多く販売しにくくなるため注意が必要です。
なお、新興国では政治的混乱やデベロッパー、建設会社の事情で工事が止まって資金が返ってこなくなる可能性もあります。物件の未完成リスクは原因もさまざまですので、現地情報を適宜収集することが重要です。
2-3 為替リスク
海外不動産では為替リスクにも注意しなければなりません。為替の変動はチャンスにもなりますがリスクにもなることがあります。特に新興国では、政治や海外情勢などの変化によって為替レートの変更幅が大きくなります。為替レートが変わると、予定通りの家賃収入が現地の通貨で得られていても、円に換算すると大きく赤字になることもあります。
特にキャピタルゲインを狙う場合には、為替レートの影響も大きくなります。為替リスクの変動要因はさまざまで、為替の専門家でも正確な予測をすることは困難です。そのため、購入や売却などの重要なアクションを起こす際には慎重になることが大切です。
2-4 ローンの利用が難しい
海外不動産投資では、国内の不動産投資よりも資金調達のハードルが高いという特徴があります。国内の金融機関が物件購入によるリスクを見積もることが難しいために融資がしにくいことがその理由です。
そのため、国内で物件を購入するよりも手頃な物件を購入できるチャンスがあっても、ローンが使えず投資ができないケースも少なくありません。全て自己資金でまかなえれば良いのですが、それほど資金に余裕がない場合は、物件購入先に支店を持っている外資系の金融機関や、現地の金融機関でローンを受けるなど別の方法を検討する必要があります。
ただし、国や地域、金融機関によって融資の可否や審査方法は異なるため難しさも伴います。資金調達のアイデアがない場合は、海外不動産を扱っている不動産会社に相談してみると良いでしょう。こうした企業では過去の例などから、融資が可能な金融機関を知っており、担当者に取り次いでもらえることもあります。
3 海外不動産の正しい選び方
海外不動産投資の成功は情報収集力によるところも大きいため、どのような情報源から情報を得るかが大切です。インターネットでは大まかな情報しか掲載されていないことも多く、またその情報がどの時点のものかを正確に確認するのが難しい面があります。
3-1 情報収集のためにセミナーを利用する
国内にいながら海外不動産についての最新かつ正確な情報を入手したいなら、不動産会社や業界団体が主催するセミナーを検討してみると良いでしょう。無料で開かれていて参加しやすいセミナーもあり、現地の市況や最新の事情、効果的な戦略、物件情報などを得ることができます。
セミナーは対象者を絞り込んで行われているため、不動産投資の経験や本業の年収などの属性が自分と近いものを選ぶと良いでしょう。必要であれば、セミナー後の個別相談にも応じてくれます。
セミナーは企業側が事前に用意したテーマに沿って開催されるため、自分が知りたい情報が提供される保証はなく、同じ企業でも講師によって質は左右されます。そのため、企業の扱っている物件やエリア、またセミナーの内容や講師についてもよく検討してからセミナーを選ぶことが大切です。
3-2 現地視察ツアーも検討してみる
海外物件を自分の目で直接確認したい方向けに現地視察ツアーを用意する企業もあります。個人で行く場合、現地までの移動時間や費用、通訳などが問題になるなど難しい面もありますが、企業が組んだ物件視察ツアーに参加すればガイドや通訳、旅程などを手配してくれます。
現地に赴いて直接確認しなければわからない物件の良さや問題点、周辺環境、交通事情などは投資判断の貴重な材料になります。また、物件を見るだけでなく、自由時間を利用して観光などもできる場合もあるので、旅行がてら視察ツアーへの参加を検討するのも良いでしょう。
3-3 信頼できる不動産会社を見つける
海外不動産投資を成功させるためには、現地の情報に強く、忙しいオーナーに代わって多くの作業を担当してくれるビジネスパートナーが必要です。
海外不動産を扱っている企業は、厳選された現地のスタッフやパートナーの協力を得て顧客に海外不動産の案件を提案しています。海外物件の取り扱い実績が多く、現地からの情報発信を積極的に行っている企業は、優良なエージェントを抱えている目安にもなります。
個人での情報収集やパートナー探しは限界があるので、大事な時間を効率よく使うためにも信頼できる不動産会社などを通してパートナーを選ぶことをおすすめします。
なお、不動産会社によって投資に対する考え方や強みのある国、エリアはさまざまです。できれば複数の不動産会社のセミナーや店舗に足を運び、実際に話をしてみて相性の良い不動産会社を選ぶのが良いでしょう。実際に相談をしたり、提案やサービスを受けたりする中で、企業や担当者の良し悪しなどもわかってくるようになります。
海外不動産投資では購入相談から売却までパートナーと長く付き合うことになるので、物件以上に慎重に選ぶことをおすすめします。何でもイエスと言ってくれる不動産会社は契約さえできればよいという場合もあるため注意が必要です。親身に相談に乗り、時には耳に痛いアドバイスもしてもらえると、ビジネスパートナーとして信頼できることもあるでしょう。
4 まとめ
海外不動産投資では、現地事情によってさまざまなリスクが想定されます。そのリスクの種類や情報は、国内で入手することが難しい場合も多いため、現地に精通したビジネスパートナーの存在が海外不動産投資では必要不可欠です。
海外不動産を扱っている不動産会社も多いので、セミナーや物件視察ツアーへの参加を検討しつつ、信頼できるパートナーを見つけることから始めてみてはいかがでしょうか。