
世界有数の先進工業国であり、欧州最大の経済規模を誇るドイツ。2024年の名目GDPは約 4.6兆米ドル に達し、ユーロ圏の経済を牽引する存在です。
製造業・テクノロジー・再生可能エネルギー・自動車産業など、幅広い分野で国際競争力を維持しており、欧州随一の「経済と技術の両立国」として知られています。
また、生活水準も非常に高く、国連の人間開発指数(HDI)2024年版では世界第6位(前年7位から上昇)。教育・医療・所得のバランスが取れた社会として、世界でも高い生活満足度を誇ります。
経済の安定性と高い生活水準は、不動産市場にも大きな影響を与えています。2025年時点のドイツ住宅市場は、2023年までの価格調整期を経て緩やかな回復基調にあり、主要都市では再び上昇トレンドが見られます。
この記事では、そんなドイツの不動産市場を最新データを交えて解説し、2025年に注目すべきおすすめエリア(ベルリン・デュッセルドルフ・ミュンヘン)について詳しく紹介していきます。
欧州最強の経済大国、ドイツはどんな国?
はじめに以下のドイツ概要を見てみましょう。
人口 |
8408万人(2025年7月、独連邦統計庁)※1 |
面積 |
34.8万平方キロメートル(日本の約94%)※2 ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、フランス、オーストリア、スイス、チェコ、ポーランド、デンマークの9か国と国境を接する |
首都 |
ベルリン(約357万人) |
言語 |
ドイツ語 |
通貨 |
ユーロ |
在留邦人数 |
43,513人(2024年10月、海外在留邦人統計)※3 |
(出典:外務省)
ドイツは EU 内で最も人口が多い国の一つであり、その人口密度も高い部類に入ります。2025年時点での人口密度は約 241 人/平方キロメートルとされています。
都市化も進展しており、都市圏への集中傾向が続いています。特に若年層(18~24 歳)が大学・仕事の機会を求めて都市部に移住する動きが強く、主要都市の人口増加が顕著です。
在留邦人数は約43,000名とヨーロッパではイギリスに次ぐ数字に。ドイツは「ヨーロッパの日本」と称される国民性であったり、敗戦後に経済、技術で世界トップレベルに君臨する強国になった共通点があるなど、親しみがもてることも影響しているのかもしれません。
外国人投資家が熱い視線を送るドイツの不動産市場
ドイツの不動産市場は、2024年以降、外国人投資家からの関心が再び高まっています。Brexit 後の英国市場の不透明感や、他欧州諸国の金利上昇・税制変更などを背景に、安定した法制度と堅実な賃貸需要を備えるドイツが、再び資産分散先として評価されていることが要因です。
実際、ドイツでは新築住宅の供給不足が続いており、住宅需要とのギャップが年々拡大しています。ドイツ連邦政府は年間40万戸の新築を目標としていますが、2024年の新築戸数は約26万戸にとどまり、依然として深刻な供給不足が続いています。(※4)
価格動向を見ると、2022〜2023年にかけて調整局面を迎えたものの、2024年第4四半期には前年同期比+1.9%と、住宅価格が再び上昇に転じました。特にハンブルクでは平均住宅価格が €5,521/m² に達し、過去5年間で約6%上昇。フランクフルトでも人口増加と雇用拡大を背景に、住宅需要は引き続き堅調です。(※5,6)
さらに、ドイツの税制も長期投資家にとって魅力的です。個人が不動産を10年以上保有して売却した場合、売却益に対する所得税が免除される制度があり、長期保有型の不動産投資に優位性があります。ただし、法人所有や商業目的での転売は課税対象となるため注意が必要です。
このように、供給不足、安定した賃貸需要、長期的な税制メリットといった要素が重なり、ドイツはヨーロッパでも屈指の安定的な不動産投資先として、再び外国人投資家の注目を集めています。
ドイツの不動産を購入するのにおすすめのエリア
住宅市場の需要と供給が課題のドイツですが、それでもドイツ大都市の特徴は「暮らしやすさ」にあり、世界ランキングでも上位を占めている街がいくつもあります。良い職が見つかり、清潔で犯罪は少なく、レジャーや文化行事も多く、交通の便が良いなど、ドイツの各都市は定評があります。
このようなドイツでの都会暮らしを望む人は増える一方で、不動産価格の高騰を招いているのは先述した通り。世界主要230都市の暮らしやすさを評価した調査(米コンサルタント会社、マーサー、2015年発表)によれば、トップ30入りしたドイツの都市は7つもあります。
ミュンヘン(4位)、デュッセルドルフ(6位)、フランクフルト・アム・マイン(7位)はベスト10に、ベルリン(14位)、ハンブルク(16位)、シュトゥットガルト(21)も上位20にランクインしています。
続いて、暮らしやすい都市にも選ばれている、不動産購入におすすめの街を紹介しましょう。
緑あふれる大都市、歴史とモダンが融合する「ベルリン」
ベルリンは、1990年のドイツ再統一後に首都機能を取り戻し、文化・メディア・学術・政治の中枢都市として発展しています。都市圏人口は約 360 万人前後で、都心部には森林、公園、運河などの自然が点在し、他の主要ドイツ都市とは異なる雰囲気の都市です。
気候面では、夏の最高気温は概ね22~25 °C前後、夜間の最低気温は12~15 °C程度となることが多く、快適な時期が続きます。冬期は寒冷で、日中の最高気温は0~5 °C前後、夜間は−2~0 °Cに下がることがあり、まれに−10 °C以下に冷え込む年もあります。年間平均気温は約10.1 °Cほどと記録されています。 
不動産市場に関しては、東京やロンドンなどと比べればまだ価格の伸び余地が見られるものの、近年は上昇圧力が強まっています。2025年1~3月期の統計では、ベルリンを含む8大都市においてマンション価格は前年比+3.2%上昇、一戸建て住宅では+4.7%の伸びを示したという報告があります。 (※7)
ベルリンの中心部人気地区における売買価格について、ミッテ(Mitte)では €7,000/m² 前後との水準も報じられており、他地区でも €4,000〜€6,000 台の価格帯が見られます。  また、郊外・準中心部のスパンダウ(Spandau)は、中心部と比べて手ごろな価格帯(既存住宅で約 €4,050/m²、新築で約 €6,160/m²)としてファミリー層からの人気が高まっています。 (※8)
不動産取引の安定性を重視するなら、ベルリンは比較的魅力的な選択肢と言えます。ただし、中心部は既に価格上昇と競争が激しいため、収益性を重視する投資家はミドルレンジ〜郊外地区に目を向けることも有効です。
欧州屈指の日本人街を擁する「デュッセルドルフ」
デュッセルドルフはドイツ中西部、ノルトライン=ヴェストファーレン州に位置し、ドイツ国内でも有数の日本人コミュニティがある街として知られています。人口は約 60~65 万人規模で、国際企業や貿易・金融業の拠点としても経済的地盤が強い都市です。
日本の金融機関・企業が欧州拠点を置くケースが多く、日本人駐在員やビジネス関係者の需要が賃貸市場を支える構造があります。駐在員家族の入れ替わりも一定で、比較的安定した居住需要が見込まれます。
不動産価格・賃料動向を見ると、2025年時点で既存マンションの価格は中心部で €5,485/m²~€7,000/m² のレンジに入っているとの報告があります。高級地区ではそれ以上の水準も見られ、旧市街やオーバーカッセル地区では €10,000/m² 超も例として挙げられています。
また、年間通じて賃貸価格は上昇傾向にあり、過去数年で年率およそ 3%前後 の賃料上昇が確認されています。
価格上昇率も回復傾向にあり、2025年にはアパート価格が 前年比 +5.65%、戸建て価格が +5.85% と報じられています。(※9)
世界で最も居住に適した都市に選出され続ける「ミュンヘン」
ミュンヘンはバイエルン州の州都で、人口は140万人超。自動車メーカー、IT、工学、医療などの産業が集結し、経済力と技術力が都市成長を支えています。住みやすさや治安・生活インフラの充実でも高い評価を受け、「世界で最も居住適性の高い都市」の常連となっています。
不動産市況に関しては、2025年のデータで既存住宅の価格が €7,500~€8,200/m² 程度と見られており、特に需要が集中する地区ではさらに高値がつく傾向があります。(※10)
また、新築マンションについては、2025年時点での価格水準は €13,400/m² 前後との報告もあり、現地建設コストや仕様の違いを反映しています。(※11) 市場全体としても需給ひっ迫は続いており、空室率は極めて低水準、賃料上昇圧力も強いという特徴があります。
ドイツの不動産は外国人でも購入できるの?
ドイツでは外国人の不動産取得に制限はありません。土地、アパート(マンション)、戸建住宅など選択肢は数多くあります。
また、外国人でも現地で銀行ローンを組むことが可能。物件価格に対して50〜60%の借入ができます。 原則ユーロ建てで借入期間は15〜20年となっています。
外国人・非居住者でも融資を受けることが可能です。ユーロ建てが原則で、固定金利期間10〜20年(案件により〜30年)など商品に幅があります。
非居住者の借入比率は概ね50〜60%程度が目安とされる一方、居住者や十分な国内所得がある場合は80%前後まで可能な事例もあります。必要な自己資金や金利・期間は金融機関と属性で大きく変わるため、複数行の事前審査が推奨です。
ドイツの不動産購入にかかる諸費用は?
不動産購入時にかかる費用は、印紙税や売買契約書作成にかかる弁護士費用、融資手数料、公証人費用、アポスティーユ費用、翻訳料、仲介手数料などです。
契約書などは原則としてドイツ語で作成されいるため、必要に応じて翻訳家や専門家のサポートが必要となり、その費用も念頭に入れておきましょう。
まとめ
今回はドイツの不動産市場に焦点を当てて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
ドイツは住宅供給不足で空室が少ないため、家賃や不動産価値の下落リスクがほとんどないことに加え、家賃はユーロ収入になるなどメリットも多いでょう。キャピタルゲイン志向でなく、家賃収入をコツコツ稼ぐのが向いている方にとってドイツ不動産はおすすめです。
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出典一覧:
※1 Statistics Times『Population of Germany』
※2 Worldmeter『Germany Demographics』
※3 外務省『海外在留邦人数調査統計』
※4 DZHYP『DZHYP_ResidentialMarket_Report_Germany_Okt2024』
※5 Global Property Guide『Germany's Residential Property Market Analysis 2025』
※6 JLL『Housing Market Overview H1 2025』
※7 Kiel Institute『Greix Q1 2025: Real estate prices on the rise, especially in major cities』
※8 Investropa『Will real estate prices in Berlin go up in 2025?』
※9 Investropa『Is it worth it buying property in Düsseldorf in 2025?』
※10 Mr. Lodge『Real Estate Prices Munich 2025』
※11 Investropa『16 statistics for the Munich real estate market in 2025』