リヒテンシュタインといえば、とても小さな国、そんなイメージが最初にくるでしょう。ヨーロッパ、特にドイツ語圏に関心がある方はその歴史や観光名所など、資産運用に関心のある方は税率の低さなどで印象に残っているかもしれません。
その不動産市場の実態はいかなるものでしょうか?今回はリヒテンシュタインの不動産事情について解説します。
リヒテンシュタインはどんな国?
リヒテンシュタインは、スイスとオーストリアにはさまれた、正式名称はリヒテンシュタイン公国、リヒテンシュタイン家の当主が世襲制で政治的権限も有する国家元首となる君主国家です。ただし、議院内閣制を採用し、国民投票で国家元首を退位させる権利もあり、国民の権利も充分に保障されています。
人口は約35,000人、そのうちリヒテンシュタインの国籍を持つ国民はわずか三分の一といわれています。
首都はファドーツ、面積は日本の小豆島とほぼ同じで、世界で6番目に小さいミニ国家です。
EUには加盟しておらず、ノルウェー、アイスランドなどと同様EEA(欧州経済地域)のメンバーで、通貨はスイスフラン、永世中立国です。また、タックスヘイブン(租税回避地)としても知られています。
リヒテンシュタインの経済と、不動産の価格推移
リヒテンシュタインの主要産業は、観光、医療、国際金融などですが、なんと言ってもタックスヘイブンとして有名です。
法人税は12.5%、国家の収益の40%が徴収した法人税で、所得税、相続税、贈与税はありません。登記された法人の数は、人口の倍以上といわれています。
TRADING ECONOMICSによると、2014-2016年のGDP成長率は前年比2.9%、マイナス0.7%、1.4%で、2016年、2017年のユーロ圏の平均である2.8%、2.5%よりは全体的に低いですが、同じく日本の成長率であった1.9%、1.1%と数値的に大差ないといえます。
2016年、2017年の失業率はそれぞれ5.5%と、EU平均の8.7%より低い結果となりました。住宅ローンの平均利率は1.75%でした。
スタンダード&プアーズによる2014年3月の国債の格付けは、長期、短期それぞれAAA/A-1+でした。
リヒテンシュタイン全体の不動産市場として、2010年の国勢調査によると、人の住む住宅は15,474件、2000年の国勢調査のときと比べて22.8%の増加でした。
経済危機からの回復後、不動産価格は毎年4-5%ずつ上昇し、2016年ですべてのタイプの不動産で640,000-4,040,000ユーロ、賃料は月額2,240-5,340ユーロでした。
現地の銀行ローンの利率は低く、リヒテンシュタイン中央銀行によると、2014年2月現在で第一抵当で2.25%、第二抵当で3.25%でした。
利回りは、2016年、首都ファドーツ、その郊外で合わせて2.2-3.4%、住宅に限れば、全土の平均は3%です。面積別では、150-300平方メートルの物件の利回りが最も高く、3.41%、続いて100-150平方メートルの物件で、3.18%でした。一番低いのは、65-80平方メートルの物件で、2.21%でした。
リヒテンシュタイン不動産は外国人でも購入できる?
リヒテンシュタインで外国人が不動産を購入するには、細かい規制があります。3年以上リヒテンシュタインに居住権を有していなければなりません。ただ他のEU加盟国の国籍を持っていれば、リヒテンシュタインで働くためにビザは不要で、リヒテンシュタインで雇用されていれば、居住権も取得することが出来ます。
リヒテンシュタインで不動産を購入するステップ
前述したように、リヒテンシュタインで不動産を購入することができる資格を有する人は限られていますが、それを満たせば、小さな国で、国の不動産の所有関係の把握も容易であり、手続きはシンプルです。
- 購入したい不動産が見つかったら、不動産業者は弁護士を通じて物件の瑕疵、未払い金の有無などを調査し、政府機関に報告します。
- 調査が済んだら、売主は弁護士に、代金を支払います。
- 登記手続き完了後、弁護士は代金を売主に支払います。
リヒテンシュタインにおける不動産購入時、売却時の「税制」
購入時
弁護士&公証費用:不動産価格の0. 9%
その他、不動産業者に支払う費用が不動産価格の3%ほどです。
賃料収入にかかる税金は、資産課税と収入課税に別れ、それぞれ毎年議会が税率を決定するか、あるいは課税資産の0.1%、課税所得の2%です。
売却時
不動産利益税:
不動産の売却額から、取得時の費用、改装など、不動産の価値を上昇させるためにかけた費用を差し引いた額を元に計算します。
15,000(約14,286ユーロ)スイスフランまでは0%、170,000スイスフラン(約161,905ユーロ)を超える場合には不動産の価値の0.70%です。
キャピタルゲイン税:
不動産の所有期間により、累進課税です。
リヒテンシュタインで不動産を購入するのにおすすめのエリア
リヒテンシュタインは、旧ファドゥーツ伯爵領のオーバーラント(高地)と旧シェレンベルク男爵領のウンターラント(低地)に分かれています。
オーバーラントのおすすめエリア
ファドーツ:2013年末人口は5,400人ほど、空港も鉄道もありませんが、バスが発達しています。観光業も盛んで、ライン川沿いです。大学もあります。
シャーン:リヒテンシュタイン最大の自治体で、4,000以上の企業があり、リヒテンシュタインのビジネスの中心地と呼べます。
トリーゼン:リヒテンシュタインで三番目に大きい自治体で、観光業、工業が盛んです。
トリーゼンベルク:リヒテンシュタインで面積が最大の自治体です。
バルザース:スイス、北イタリアに近く、言語、文化的な影響を受けている、ライン川沿いの自治体です。
プランケン:人口400人に満たない最小の自治体です。
ウンターラントのおすすめエリア
エッシェン:リヒテンシュタイン第四の自治体です。
ガンプリン:リヒテンシュタイン最古の都市で、歴史的建造物が多い
シェレンベルク:オーストリアとの国境に接する人口わずか1000人ほどのライン川沿いの自治体です。
マウレン:北東に位置する自治体です。
ルッゲル:観光地として有名な、ライン川沿いの自治体です。オーストリア、スイスとの国境に接しています。
まとめ
いかがでしょうか?リヒテンシュタインは通常の、賃料収入やキャピタルゲインを目的とする不動産投資ができる人は限られているかもしれませんが、もしも、駐在や現地就職の機会があれば、不動産を購入することもことは不可能ではありません。
また、タックスヘイブンであるため、現地で起業という形で居住要件を満たすのも魅力的でしょう。