2018-07-06

ウクライナの不動産ガイド。購入規制や価格動向まで徹底調査

  • 海外不動産コラム


ウクライナというと、古くはソビエト時代のチェルノブイリ原発事故、21世紀になってからは政治的混乱、2013年から始まった内戦、ロシアによるクリミア併合などの印象が強いかもしれません。

一方で、首都キエフは「森と公園の都」と呼ばれる東欧最古の美しい都市で、通貨の価値の低下による物価の安さ、鉄鋼業の発達などに目を向ければ、今後の経済回復も見通すことができ、投資の魅力などもある国といえます。

ウクライナはどんな国?


ウクライナは1991年、ソビエト連邦の崩壊とともに独立、しかしその後もロシアからの影響を強く受け、ロシアが最大の貿易相手国であると同時に、最大の干渉国であり、ガスの供給を止められたり、領土を併合されたりと悩まされてきましたが、現在は西部を中心に経済的にも文化的にもEUとの関係を強化させています。

面積は日本の1.6倍、人口は約4500万人、在住日本人の数は2016年1月の時点で、216人であると外務省は発表しています。進出している日本企業は20社ほどです。

通貨はフリヴニャで、2017年時点で、1ドルは28.68フリヴニャでした。

ロシアとIMF双方から経済支援を受けており、司法、医療、年金などの分野が遅れており、IMFの指導の下、国営企業の民営化をはじめとする構造改革、腐敗の撲滅等に取り組んでいます。

ウクライナの経済と、不動産の価格推移


独立後、2000年ごろからリーマンショックまでバブルが続き、その分大きな打撃を受けました。その後の政治的、経済的混乱の中、2015年にはロシアからの20億ドルの借款がデフォルトに陥り、2017年4月にはIMFから10億ドルを借り入れました。

全体的には国際情勢の落ち着きとともに経済も回復を始めましたが、ウクライナ国立銀行によると、東部ドネツク、ルハンシクでの貨物封鎖により、2017年のGDP成長率は1.6%にとどまり、2018年には3.2%と予測されています。

酷いインフレは落ち着きつつあり、2017年6月には15.1%であったのが2017年全体では9.1%、2018年には6.0%になると予想されています。2017年第一四半期の失業率は10.1%でした。

2020年のNATO加盟を目指し、構造改革に取り組んでいます。

2017年には、外国人の投資が増加、これまで控えていた投資家たちが一斉に投資した結果でした。

ウクライナの不動産価格は経済危機前の2008年9月と比べ、内戦により2014年までに68.8%低下、2015年には回復を始めましたが、2017年まで緩やかに下がっており、2017年代に四半期には、前期と比べて3.3%の低下でした。

ただ、経済回復を開始したこと、最低賃金が前年の1,378フリヴニャから、2017年には3,200フリヴニャに上昇、不動産所有者が支払う最低税額が前年の41.34フリヴニャから、2017年には48フリヴニャに増額されるなど、回復の兆しを見せています。

利回りは驚異的で、ウクライナ全体で8.8%、キエフの集合住宅で、50平方メートル以下で10.2%、120平方メートル以下でも9.09%、180平方メートルまで含めても7.5%でした。多くは投資用マンションで、2008年と比べてドルとのレートが50%以上低下したフリヴニャで購入し、ドルで売却することで利益を得る投資家が続出しました。

ウクライナ不動産は外国人でも購入できる?


ウクライナで外国人が不動産を購入するに当たり、制限はありません。2002年に制定された法律によると、外国人は農業地以外は所有することができ、また、それ以外の不動産であれば、50年以内の期間であれば賃貸することができます。賃貸も登記する必要があります。

ウクライナで不動産を購入するステップ


購入する際には、売主の所有権を証明する、以下の書類を審査する必要があります。

  1. 民間所有の不動産であることの証明、公証した売買契約書、相続あるいは贈与の証明書
  2. 売主が所有者であることを証明する、BTI (The Bureau of Technical Inventory)によって発行された証明書および登録番号
  3. United Register of Prohibitions on Disposal of Immovable propertyにより発 行された、抵当権、その他の財産上の負担がないことの証明書

売買契約を締結した際には、両当事者のパスポートと、州税、年金基金が支払われたことを示す公証が必要になります。

買主は、BTI (The Bureau of Technical Inventory)において所有権移転登記の申請して手続きは終了します。

ウクライナにおける不動産購入時、売却時の「税制」

購入時

登記費用:不動産価格の0.01-0,05%
州税:不動産価格の0.5%
年金基金:不動産価格の1%
土地税:原則として不動産価格の1%

不動産価格が測定できない場合には、都市部では1平方メートル当たり1.2-3フリヴニャ。

所有時

固定資産税:その区域の最低賃金、物件の大きさによる。

賃料収入にかかる所得税については、非居住者である所得税率はウクライナにおける全収入の18%、法人の場合は収益が50万フリヴニャ(約15,625ユーロ)を超えない場合には、法人の所在地により月額20-200フリヴニャ(0.63-6ユーロ)です。

売却時

キャピタルゲイン税:原則として5%

2007年以降、100平方メートル以下の物件の売却の際には、キャピタルゲイン税は免除されることに決定。

ウクライナで不動産を購入するのにおすすめのエリア

首都キエフ


ウクライナの首都キエフは人口約260万人、ウクライナの経済的、政治的、文化的な中心であり、グローバル都市です。

10の行政区分に別れ、中心部に位置するペチェールシク区、ポジル区、Khreshchatyk区などは、不動産価格も高くなっています。

2014,5年の騒乱の舞台となったのは、東側やクリミアであり、2018年現在、キエフに影響は全くといっていいほどなく、他の東欧諸国と比較して治安に問題はありません。

リヴィウ


リヴィウは、ポーランドの国境からわずか70kmの、ユネスコの世界遺産に登録されている都市です。人口は約83万人、公用語でないロシア語が東部を中心に広く使われているのに対して、ウクライナの中でもウクライナ語のみで生活している住民が多く、考え方も、政治的にも経済的にもロシアよりEUとの近い関係を重要視しています。

その影響で、国際基準に従ってビジネスを行うという姿勢が他の地域より強いといえます。

オデッサ


オデッサは、ウクライナ南部、黒海沿岸に位置するウクライナで三番目の規模を誇る、港湾、免税ゾーン、工業地帯、リゾート地で有名です。

港湾は貿易港、漁港、軍港の機能を備え、世界100カ国以上のフェリーや客船が定期的に運航し、観光シーズンには地中海などからのクルーズ船も寄港し、2000年3月には自由貿易港に指定されました。

温暖ですごしやすい気候であることからソビエト時代に保養地として開発され、宮殿、美術館、博物館、劇場と、観光スポットも豊富です。

まとめ


このように全体的に見て、ウクライナ投資の魅力は、利回りの高さ、売買取引費用の低さ、今後の成長、構造改革への期待であるといえます。また、通貨の価値の差をうまく利用することで収益を上げることもできるでしょう。

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ライター:伊藤陽輝
東京都出身、ヨーロッパ某国在住。不動産、金融投資アドバイザーとして、多くの記事を執筆し、ヨーロッパを中心とする海外不動産、各種の金融商品も販売。宅地建物取引士、証券外務員などの資格を有する。海外在住暦11年。