オーストリアは、地理的には中欧に位置する先進国で、美しい音楽の演奏、シェーンブルーンやヴェルヴェデーレの宮殿など人々を圧倒する大規模な建築などで人気で、旅行で訪れたことのある方も少なくありません。一方で、現地在住者が居住目的で購入する以外に、投資目的で不動産を買った、という方に会ったり、オーストリア投資セミナーなども見たことはありません。今回はそんな、オーストリアの不動産について調査してみました。

オーストリアはどんな国?


オーストリアは、2017年の年間一人当たりGDPは世界第10位と、豊かな国です。

中部ヨーロッパの内陸に位置し、国土は北海道とほぼ同じ広さ、人口は約880万人です。

政治的には連邦共和制を採用しています。

1955年には、永世中立国となり、1995年に欧州連合に加盟、通貨はユーロを使用しています。

外国人、移民は全人口の9.8%を占めますが、その多くはヨーロッパ諸国やトルコの出身です。音楽を中心とする文化大国でもあります。

オーストリアの経済と、不動産の価格推移


オーストリアの経済は輸出重視で、自動車、鉄鋼関連の製品を、全体の75%をヨーロッパの国々へ、中でも30%はドイツの輸出し、また、ウィーン、ザルツブルグ、チロルなどを中心に、観光業も盛んです。

IMFによると、2017年のGDP成長率は前年比2.3%と、2011年以来最高で、2018年には1.9%、2019年には1.5%と予想されています。

2017年の失業率は5.5%と、EU平均の8.7%より低い結果となりました。住宅ローンの平均利率は1.75%でした。

2017年のオーストリア全体の不動産価格の前年比成長率は4.7%、2013年より、4.11%、2.42%、7.59%、そして2016年には4.57%と、緩やかな伸びが続いています。

しかし、都市毎に見ると、首都ウィーンでは前年比プラス0.32%、2003年以来最も緩やかな伸びでしたが、一方でそれ以外の都市の合計では、前年比7.39%の伸びでした。

また、新築物件は前年比プラス7.58%であったことと比べ、中古物件はわずか0.7%と、大きな差が出ています。

長期的に見れば、2003年から2013年の価格上昇率は、ウィーンで99.6%、その他の都市の平均で37.1%でした。

供給、需要ともに伸びていて、新築物件の建築も盛ん、取引件数も年々増加しています。

利回りは、ウィーンでは区によって、また物件の面積によって大きく異なり、第2区、第5区などの50平方メートル以下の物件では4.8%を越えるのに比べ、第1区、第3区、8区、9区などの130平方メートルを超える物件では、2.5%以下でした。ザルツブルクで平均して3%台、グラッツの65平方メートル以下の物件では、4.5%を超えます。

オーストリア不動産は外国人でも購入できる?


オーストリアで外国人が不動産を購入するに当たり、特に制限はありません。

オーストリアで不動産を購入するステップ

まず、購入したい不動産が見つかったら、不動産業者に書面による正式なオファーを出し、業者は不動産取得税、弁護士費用、登記美容、公証費用、不動産業者への手数料に関するリストを作成します。

次に、売主がオファーを受け入れたら、オーストリアの弁護士または公証人が作成した売買契約書に署名して契約を締結し、買主は不動産価格の10%を頭金として支払います。全額を支払うまで、頭金はエスクローに保管されます。

最後に、弁護士は管轄の法務局で移転登記をします。

ここまでで、9-32日かかり、諸費用は、不動産価格の約4.5%です。

オーストリアにおける不動産購入時、売却時の「税制」


購入時:

公証費用:110ユーロ+20%のVAT
不動産取得税:不動産価格の3.5%
印紙税:0.8-2%
固定資産税:連邦税2%
*地方税は地域によります。

賃料収入にかかる所得税は、累進課税で年間11,000ユーロまでは無料、11,000-18,000ユーロの場合35%、最高で1,000,000ユーロを超えると55%となります。

弁護士費用が不動産価格の1-3%+20%のVAT、不動産業者への手数料は不動産価格の1.5-2%+20%のVATのことが多いです。

売却時:

キャピタルゲイン税:27.5%
物件を10年以上保有した場合には、年間2%ずつ、最大で50%減率となります。

オーストリアで不動産を購入するのにおすすめのエリア


ウィーンは、23区に分かれており、番号が若い方が中心地です。

3区(ラントシュトラーセ)

通勤、通学に便利なため、駐在や留学で現地に住むためには非常に便利で、また、貸し出すことになった場合の利回りは65平方メートル以下の物件では4%を超え、中でも50平方メートル以下の平均は4.71%です。

ウィーン国立大学に近く、ウィーン博物館、ヴェルヴェデ-レ宮殿まで徒歩で観光することができます。また国際空港と市内を結ぶシティ・エアポート・トレインが通っており、帰国、出張、旅行にも便利です。

5区(マルガレーテン)

中心部のやや南西に位置し、地下鉄の便もよいですが、徒歩で中心部まで行くこともできる距離です。

国立オペラ座やナッシュマルクトなど、観光地も多く、50平方メートル以下の物件の利回りは、4.88%に上りました。

10区(ファヴォリーテン)

中心部から見て南東に位置し、距離はやや離れますが、ウィーンは小さい町で、地下鉄で端から端まで3、40分の距離であるため、リーズナブルな価格を希望する投資家、テナントに人気です。数々のアトラクションのある「水の体験ワールド」もあります。

利回りは65平方メートル以下の物件では4%を超え、中でも50平方メートル以下の平均は4.89%でした。

まとめ


今回はオーストリアの不動産について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?

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ライター:伊藤陽輝
東京都出身、ヨーロッパ某国在住。不動産、金融投資アドバイザーとして、多くの記事を執筆し、ヨーロッパを中心とする海外不動産、各種の金融商品も販売。宅地建物取引士、証券外務員などの資格を有する。海外在住暦11年。