「音楽の都」として知られるオーストリアの首都ウィーン。緑地や素晴らしい建築物も多く、イギリスの「エコノミスト誌」が行った世界の住みやすい都市についての調査で、ほぼ満点のスコアで一位に選ばれている。調査は、地域の安定性、医療、文化、環境、教育、インフラなどの分野におけるスコアをもとに行われた。

ランキングの上位には、人口が過密していない中規模の都市が目立つが、この傾向を鑑みると、人口増加が著しいウィーンが首位というのは注目に値するだろう。

ウィーンは毎年25,000人ずつ増加しているとも言われており、現在の人口は約190万人に上る。人口増加が見られる地域では、しばしば住宅不足が問題となるものだが、ウィーンにおいては特に問題は見られない。

その理由は何か。手頃な価格の住宅が毎年13,000件のペースで建築されていることが大きいだろう。市場に出ている公営住宅は、その計画やデザインが大きく評価されている。実際に公営住宅の人気は高く、市の人口の62%が自治体などが所有・管理する物件に住むことを選択している。土地活用に関する厳しい規定と政府からの多額の助成金、さらに「住宅=人権」という市の方針が、現在のウィーンの住宅事情を支えていると言える。

ウィーンでは毎年約7億ドル(約760億円)が公営住宅の建築や修繕に充てられており、その財源は所得税や法人税、寄付などで賄われている。このような取り組みで、ウィーンはヨーロッパで住宅価格対所得比(Price to Income Ratio)が最も低い国の一つとなっている。

ウィーンの公営住宅の家賃は月収の27%ほどである一方、ニューヨークでは58%という調査結果も出ている。

また市内の公共交通機関の分かりやすさと料金の安さも、ウィーンの住宅事情に大きく貢献している。地下鉄、バス、トラムなどの年間パスは365ユーロ(約44,000円)で手に入れることができ、市内交通の73%は自家用車以外でカバーできる。

カナダのバンクーバーなどでは、ウィーンの住宅政策のモデルとしたアプローチが検討されているが、現在のところ完全な実現には至っていないという。

Photo:iStock

【参照】Why Vienna dominates the 'world's most livable city' rankings

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セカイプロパティ編集部
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