アメリカで所有している不動産の売却を考え始めたけれど、初めてで手順がわからないという人もいるのではないでしょうか? アメリカの不動産売却は、州によって税金も変わりますし、商習慣も色々違いがあって複雑です。今回はアメリカの特に西海岸の不動産売却の流れを解説します。

アメリカ不動産の主な売却ステップ

アメリカ不動産の売却ステップと各ステップにおける注意点について解説します。

アメリカ不動産の売却ステップ①不動産エージェントを選ぶ

アメリカ不動産を売却するには、まず最初に不動産エージェントを選びます。アメリカでは日本人の不動産エージェントも少なくありません。例えばハワイのオアフ島には日系の不動産会社もたくさんあります。アメリカ人よりも日本人の方が、言語の壁もなくコミュニケーションもスムーズです。アメリカ不動産を売却する場合には、まず日本人の不動産エージェントを探すと、その後の手続きもスムーズに進められます。

アメリカ不動産の売却ステップ②売却価格の設定

不動産エージェントを選んだら、物件の売却価格を決めるために査定を受けます。アメリカでは、不動産鑑定士に依頼してアプライザルレポートという鑑定書を取得するのが一般的です。アプライザルレポートには、近隣の類似物件の価格などに基づいた鑑定額が記載されています。アプライザルレポートを取得したら、不動産エージェントと協議して売却価格を設定します。なお、物件を売却するとなると、売り手はできるだけ早く、高値で売りたいと考えるものです。しかし、物件の売却を円滑に行うには、周辺相場に合わせた適正な売却価格の設定が重要です。売却価格を大幅に高く設定してしまうと、オファーが入らない、誰も内見に来ないということもあります。一度高値で売り出し、売れないから価格を下げると、物件に何の問題がなくても不良物件ではないか思われる可能性もあります。

アメリカ不動産の売却ステップ③市場に売り出す

売却価格が決定したら、MLSという不動産物件情報の専門サイトに登録し、市場に売りに出します。エージェントはオープンハウス(物件内覧会)をして、できるだけ多くの人に物件を見てもらいます。アメリカ不動産の売却にあたっては、州によって不動産エージェントとの契約内容が異なります。エージェント契約を結ぶときには、売却活動の報告頻度などについて確認しておくことも重要です。アメリカ現地の不動産エージェントに売却活動を任せる場合は特に、定期的なコミュニケーションも必要になります。

アメリカ不動産の売却ステップ④購入希望者からのオファーを受け取る

物件を売り出すと、購入希望者が現れた場合はオファーが提示されます。オファーは書面で提示されるもので、その記載内容は主に以下のようなものです。

・物件の希望購入価格
・ローン利用か現金購入か(ローンの場合は借入額も)
・引渡し希望日

売主は、オファーを受け取ったら購入希望者の状況や提示された条件などを審査し、対応を決めます。オファーの対応には以下の3パターンがあります。

・オファーに合意する
・断って別のオファーを待つ
・条件変更の提示をする(=カウンターオファーを出す)

なお、複数のオファーを受け取った場合は、売主は最も条件が良いオファーを選んで交渉可能です。例えば、ローンの利用希望と現金購入のオファーを同時に受け取った場合は、現金購入のオファーを選ぶ方が安全と言えます。ローンの利用希望がある場合は、購入希望者がローン審査を通過できなかった場合に契約キャンセルになってしまうからです。オファーの選別は、希望購入額が一番高いからという理由だけで決めるのではなく、キャンセルのリスクも考慮しつつ検討するのが重要になります。

アメリカ不動産の売却ステップ⑤物件売却前の諸手続き

売却条件について合意したら、売買契約の締結に移ります。アメリカ不動産の取引では、「エスクロー」という第三者機関を通じて手続きを進めるのがルールです。エスクローとは公正な不動産取引を仲介する会社のことを指します。なお、アメリカ西海岸とアメリカ中部でエスクロー会社を使う州が多く、東海岸と南部では弁護士を仲介業者として使うことが多いようです。売主と買主とは、それぞれ自らが契約した不動産エージェントへ必要書類を提出し、不動産エージェントからエスクローに書類が送られます。必要書類を受け取ると、エスクローは以下のポイントについて調査します。

・別の名義者の抵当権がついていないか
・物件の登記内容に瑕疵がないか
・税金の未払金などがないか
・集合住宅の場合は管理費等の未払いがないか

また、売買契約の締結後は買主によるインスペクションをするのが一般的です。インスペクションとは、物件の点検調査のことを指します。インスペクションでは、シロアリ被害の有無や構造躯体の状況について、専門家によるチェックが行われます。なお、万一修繕を要する箇所が見つかった場合は、買主から費用負担を伴う修繕の交渉が入る場合もあるので要注意です。

アメリカ不動産売却ステップ⑥売却完了

売買契約の締結後、インスペクションと買主のローン審査などが終了したら、物件の引渡し手続きに入ります。買主からの購入資金が着金すると、エスクローが「クロージングステートメント」という決済明細書を作成します。クロージングステートメントの内容を確認し、買主と売主との双方がサインしたら決済は完了です。物件の売却額から各諸経費を差し引いた残額が売主の銀行口座に振り込まれます。決済が完了すると、エスクローが物件の所有権移転登記の手続きに入り、ワランティディードという登記済証が発行されたら、物件の売却は完了です。

アメリカ不動産の売却でかかる諸経費や税金について

アメリカ不動産の売却では、主に売手の方が負担が大きくなる点に要注意です。また、税金が州によって異なるため、事前の確認が必要になります。

諸経費は売手の方が負担が大きい

アメリカ不動産の取引では、売手と買手とにそれぞれ別々の不動産エージェントがつきます。両方のエージェントに対してエージェントフィーを支払うことになりますが、売手が買手のエージェントフィーも負担するのが通常です。エージェントフィーは1人あたり物件売却額の3%なので、売手は合計で6%の手数料を負担することになります。アメリカ不動産の取引では、買手よりも売手の費用負担が大きい点に要注意です。なお、そのほかにもエスクローに対して支払う手数料や、登記手続きに関する手数料などが発生します。全ての手数料を合計すると、物件売却額の5%〜10%程度になります。

税金は州によって異なる

アメリカの税金には州ごとにかかる州税と、どの州でもかかる連邦税との2種類があります。連邦税については売上から源泉徴収されるため要注意です。日本とアメリカは租税条約を締結しているため二重課税はされませんが、税還付までに時間がかかることもあります。また、州税は州ごとに税金の種類と税率が異なるため、あらかじめ不動産エージェントに確認が必要です。なお、州税の種類と税率については、こちらのwebサイトでも確認できます。

※参照:TAX FOUNDATION

まとめ

アメリカ不動産の売却が円滑に進むかどうかは、エージェントの知識や能力によります。初めての不動産売却で不安でも、有能なエージェントがいれば、スムーズな売却が可能です。したがって、ステップ1のエージェント選びは、最も重要なステップだとも言えます。

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