2017-11-01

外国人が日本で住宅ローンを借りる4つのステップ。永住権は必要?

  • 海外不動産コラム

外国人が日本で家を買うことは、日本人が買う時と比べ数倍も大変かもしれません。特に外国人にとって大変なのが、住宅ローン。家は購入したいけど、住宅ローンが組めないから購入を断念される外国人の方が数多くいます。そこで、本気記事では、一人でも多くの外国人が住宅ローンを借り、日本で家を購入できるよう、外国人が日本で住宅ローンを組む際の流れを詳しく解説しました。


外国人が住宅ローンを借りられる条件は?

そもそも、外国人は住宅ローンを組めるのでしょうか?結論を言うと、条件を満たせば借りることはできます。外国人が住宅ローンを借りる際に、ポイントとなるのは次の3つです。

①在留資格の種類は何か
②日本の会社でどれだけの期間働いているか
③配偶者に日本人がいるか



それでは、条件を一つずつ解説します。

①在留資格の種類は何か

外国人が日本に滞在するためには、在留資格(ビザ)が必要となりますよね。ビザの種類は、旅行や留学、研究や永住に至るまで計30種類近くあり、保有するビザの種類によって、住宅ローンの審査対象になるか否が決まります。住宅ローンの審査対象となり得る代表的なビザは次の通りです。

  • 永住ビザ(Permanent Resident Visa)
    就労ビザ(Work Visa)
    配偶者ビザ(Spouse of a Japanese national Visa)

永住権は必要か

「永住権」とは、在留期間を制限されずに、その国に住むことができる権利のことです。永住権の証明である「永住ビザ」は、外国人が住宅ローンを利用する際に一番有利なビザです。永住ビザを保有していれば、外国人も日本人と同様の扱いとなり、住宅ローンの審査対象となります。就労ビザや配偶者ビザは、永住ビザと異なり、保有しているだけで必ず審査対象となるわけではありません。

②日本の会社でどれだけの期間働いているか

日本の企業に勤めている年数が長い外国人ほど、住宅ローンの審査が通りやすくなります。さらには、転職などをせず、一社で働いている勤続年数が長いほど、審査で有利になりやすいです。

転職を繰り返していたり、一年以内に転職をしてしまったりした場合でも、同じ業界の中であれば、マイナスと判断されることはありません。もちろん銀行にはよりますが、日本での勤務期間が3年あることを目安としているところが多いようです。

③配偶者に日本人がいるか

住宅ローンを希望している外国人の配偶者が、日本国籍の方であれば、審査の対象となりやすいです。
婚姻状況で住宅ローンの審査が有利になるケースとして、配偶者が日本国籍か否かということに加えて、学校に通っている子供がいる場合には有利になる傾向にあります。

外国人が住宅ローンを組むステップ①:住宅ローン事前審査

住宅ローン事前審査とは

住宅ローンの事前審査は、仮審査とも呼ばれており、不動産の売買契約が交わされる前に、金融機関からお金を借りられるかを見定めるために行われます。
事前審査で承認が出れば、住宅ローンの本審査でも、順調に進む場合が多いです。事前審査はローンの契約前に無料で行う事が可能で、銀行によっては事前審査がないところもあります。
住宅ローンの事前審査では、申請者は以下の事項を把握することができます。

住宅ローン借り入れ可能額銀行から最大どれくらいローンが借りられるか。
返済期間ローン返済終了までにかかる期間
金利優遇幅金融機関が基準金利(店頭金利)からディスカウントする金利。

金融機関がチェックするポイント

個人信用情報個人信用情報とは、ローン申込者の信用を判断できる情報を意味します。申込者の勤務先、過去と現在のローンやクレジットカードの借り入れ状況などが項目に含まれます。個人信用情報を管理している機関は以下の3つです。

  • CIC
    全国銀行個人信用情報センター 
    JICC

現在の借り入れ状況

学費や自動車の借金が残っている状態で住宅ローンを申請する場合、事前審査を通過するのは難しくなります。
金融機関側からすれば、いくつもの金融機関でお金を借りている人は信用ができないからです。
住宅ローンを申し込む前に、なるべく残っている借金を完済するようにしましょう。

勤続年数と年収

勤め先に長年勤務している人は、安定した収入源があることを確認できるため、金融機関からの信用度が高くなります。
特に3年以上の勤続が一般的に良いと言われています。

健康状態

ほとんどの金融機関は、ローン申請者に団体信用生命保険の加入を義務付けています。
そのため、加入するのに健康状態が良好でなければなりません。

しかし、癌、急性心筋梗塞、脳卒中のいわゆる「3大疾病」を持ちながらも加入できる制度もあるので、なるべく日頃から健康を意識するようにしましょう。

住宅ローン事前審査の流れ

住宅ローンの事前審査は次のような流れで行われます。

  1. 購入したい物件を決定(最短1日)
  2. 事前審査書類の提出(大体2~3日に金融機関に提出することが望ましい。)(2営業日~1週間)
  3. 審査(承認/非承認)結果受理


ポイントとしては、購入したい物件をもとに事前審査を出すことです。銀行側は事前審査で物件の担保評価(購入物件の価値)を審査基準の一つとするため、物件が決まらないことには融資額を決めることは難しくなります。

資金計画のために先に融資条件が知りたい場合は、購入したい物件と同様の条件の物件で事前審査を出してみるという手も考えられます。
事前審査にかかる時間は、時期にもよりますが、早い金融機関で2日営業日、長くても一週間程度です。

住宅ローン事前審査に必要な書類

住宅ローン事前審査には次のような書類が必要になります。

住宅ローン事前審査申込書(英語: Pre-application Enquiry Form)
本人確認書(パスポート、運転免許書など)(英語: Identity document)
健康保険証(英語: Health Insurance Card)
源泉徴収票(英語: Withholding Tax Statement)
ローン返済表(英語: Loan repayment schedule)
借入れが他にある場合。自動車のローンやショッピングローンなどがある場合。
購入物件の図面(英語: Blueprint of desired property)

住宅ローン事前審査の書き方の注意

基本的には、本人が全て記入することが望ましいとされています。
ご家族の方が書くことを許可している金融機関もありますが、その場合でも『申込み人欄』は本人のみしか記入を許可しておりません。

住宅ローン事前審査が受理されたら確認する項目

一般的には住宅ローンを組める最大の額は、年収の8倍までの金額と言われています。
ただ、購入する物件の担保評価額が低いと(=あまりにも古い物件は担保評価が低いとされる)、たとえ年収が高くとも融資が受けにくくなる可能性があります。よって物件によって融資額が変わることも念頭に置いておきましょう。

外国人が住宅ローンを組むステップ②:住宅ローン本申込み

住宅ローン本申込みとは

住宅ローンの事前審査(仮審査)が終われば、銀行などの金融機関からローンの手続きを進めるために、住宅ローンの本申込みが行われます。
この手続きは、不動産売買契約後に行われ、「住宅ローン本審査」と呼ばれています。
申込みをしてから審査結果までは、約14営業日(2週間)、2月〜3月末にかけての繁忙期であれば1ヶ月ほどかかる場合もあります。

金融機関がチェックするポイント

仮審査では主にローンの返済が可能であるかを判断されますが、本審査の場合は、返済能力以外に、物件の担保価値、借主の健康状態なども確認されます。
借主の健康状態が確認される理由は、借主が「団体信用生命保険」に加入できるかどうかを、金融機関が判断するためです。

団体信用生命保険とは、返済者が高度障害または死亡してしまた時に、生命保険会社が、残された家族に代わって住宅ローンの残高を支払う保険です。
健康状態が良好ではなく、団体信用生命保険に加入できない場合は、住宅ローンの借入れが難しくなる可能性があります。
そのため、「事前審査は通っても本審査は通らない」場合もありますので、ご注意ください。

住宅ローン本審査の流れ

住宅ローン本審査の流れは次の通りです。

  1. 売主と不動産売買契約を締結(期間は決まっていないが、早い方が良い)
    本審査書類の提出(2週間程度)
    審査結果(承認/非承認)受理

    基本的には事前審査を行った金融機関に、本審査を申し込むことが多いですが、事前審査と異なる金融機関に提出しても問題ありません。
    本審査が通った金融機関でローンを組む義務があるわけではないので、いくつも審査にかけた上で、金利などの条件を比較して決定することをオススメします。

住宅ローン本審査に必要な書類

住宅ローン本審査に必要な書類は次の通りです。

▼本人を確認できる書類
健康保険証、運転免許証等(Health Insurance Card, Driver’s License, etc.)
住民票(Residence Certificate)
印鑑証明書(Certificate of Registered Seal)

▼収入(年収)を確認できる書類
給与所得者の場合:源泉徴収票、所得証明書等(Company employees: Withholding Tax Certificate, Income Certificate, etc. ) 
自営業者の場合:納税証明書、確定申告書(3期分)等(Self-employed: Tax Payment Certificate, Tax Return Documents of three terms, etc.) 
会社経営者の場合:源泉徴収票、法人決算書(3期分)等(Company Manager: Withholding Tax Statement, Corporate Financial Statement of three terms, etc.)

▼勤続年数を確認できる書類
健康保険証等 (Health Insurance Card, etc.)


▼物件に関する書類
不動産売買契約書 (Sales Agreement Contract) 

重要事項説明書 (Disclosure Statement) 
土地・建物の登記簿謄本 (Certified copy of the commercial register) 
物件概要書 (Property Overview Document) 
公図、物件案内地図 (Property Layout) 
間取り図、測量図、配置図等 (Floor Plan, Area Survey Map, Arrangement Chart,etc.)

住宅ローンの金利タイプについて

住宅ローンの金利の種類は金融機関によって異なりますが、大きく2つに分けることができます。

変動金利

変動金利とは、銀行の判断で金利が変わる住宅ローン。半年ごとなどの短い期間に金利が見直されるプランを示します。金利が下がっている時期であれば、支払う金額が少なくなるというメリットがある一方で、金利水準が上昇すると、想定よりも返済額が多くなり、ローンの返済計画が大きく変わる可能性があります。

固定金利

固定金利とは、借入期間にわたって金利が変わらない住宅ローン。または、5年や10年などの一定期間に支払う金利が固定なプランを示します。一部の金融機関はローン返済期間に金利がずっと固定なプランもあります。返済額が一定であり、返済計画が立てやすいというメリットもありますが、金利が上昇している期間であれば、支払う金利も高くなるというデメリットもあります。

もし住宅ローン本審査に落ちてしまったら?

本審査に落ちてしまったら、主な対策方法として2つあげられます。

①他の金融機関で再審査を行う

他の金融機関に住宅ローンを申込んでみることです。金融機関によって、審査基準が異なるため、1つの金融機関の審査に落ちたとしても、審査に通る可能性もあります。

②借入れ額を減らす

借入れ額を少なくしてみることがあげられます。物件購入時に支払う頭金を多く用意することで、審査が通る可能性もあります。ただし、本審査に落ちた理由が健康状態によるものであれば、借入れ額を少なくしたとしても、本審査に通過するとは限りません。不動産会社、銀行と相談しながら進めていくのがよいでしょう。


それでも審査に通らない場合は?

上記の対策を行っても住宅ローン本審査が通らなかった場合は、不動産売買契約に書かれている「融資利用の特約」(一定期日までに住宅ローンが認められない場合、契約を解除、手付金も返還される特約)に従って、契約を破棄することとなります。※住宅ローンを申し込む場合は、「融資利用の特約」が付加されているかを確認しましょう。

外国人が住宅ローンを組むステップ③:住宅ローン契約

住宅ローン本審査が通過したら、いよいよ住宅ローンの契約です。住宅ローンの契約で行うことを紹介します。

住宅ローン契約(金銭消費貸借契約)とは

住宅ローンの正式名称は「金銭消費貸借契約」。ローンを貸す側(金融機関)と借りる側との間の契約であり、貸借を行う条件を記しています。

契約を結ぶ

金銭消費貸借契約には主に以下の項目が一般的です。・借入れ金額と返済期間などの諸事項・ローンが滞納している場合の対応・抵当権(金融機関が設定する不動産への担保権)の設定基本的にはローン実行の一週間前以内に、銀行にて契約を締結することが望ましいとされています。

契約締結日の流れ

新規口座の申込
1.ローンに関する説明と契約内容の確認
2.契約書に必要事項を記入・捺印
3.必要書類の提出
4.返済口座の通帳受取
5.書類等の確認・完了

用意するもの

身分証明書(運転免許証等)
印鑑証明書
住民票・実印
銀行届け印
通帳
カード
収入印紙代(借入れ額によって金額は異なる)

注意点

不動産売買契約書原本、住民票、印鑑証明は新住所のものを望まれることが多いです。また、住民票は、世帯全員が載っているものを取得してください。
ローン契約をする銀行と取引がある場合は、その届け印と通帳、キャッシュカードを持参するようにしてください。
過去に取引がない銀行の場合は、ローン契約時に通帳とキャッシュカードを作るので、銀行への届け印のみ持参してください。当日の手続きは1〜2時間程度で完了します。

外国人が住宅ローンを組むステップ④:融資の実行

住宅ローン契約が完了したら、口座に振り込まれたローン(融資とも言います)や物件購入価格の未払い分などのお金の最後の取引を行います。
これを一般的に「融資の実行」と言います。融資が実行される際に行うことをご紹介します。

融資実行日に行うこと

融資実行日とは、不動産を購入する側の口座に融資が振り込まれる日を意味します。
同日に不動産会社の担当者や司法書士、不動産の所有者、購入者(ローン申請者)が立ち会い、残金決済を行うのが一般的です。最後に売主が鍵を購入者に渡せば取引が完了します。
融資の実行日には、次に挙げることを行う必要があります。

1.登記移転書類(司法書士による)
2.融資実行
3.着金確認
4.残代金・諸費用の送金
5.残代金、諸費用の着金確認
6.領収書の発行
7.不動産登記(不動産やその所有者の情報を公開すること)
8.鍵の引き渡し

用意するもの

残代金(物件購入価格の未払い分) 当日振り込めるよう手配しておく
諸費用(仲介手数料、登記費用(現金で用意する)、火災保険料等のお金
実印
住民票(同居する人全員分)
写真がついている身分証明書(運転免許証、パスポートなど)

注意点

金銭消費貸借契約を結んでから融資実行日までには3日~1週間程度かかります。また、売買契約を結んでから住宅ローンの融資が実行されるまでは、おおよそ1ヶ月~1ヶ月半程度かかります。
月末に融資実行する場合、融資実行から着金まで1時間程度かかることがあります。

まとめ

以上で住宅ローンの申し込みから実行まで紹介しました。申請が通りやすくなるために、今から他のローンを返済するようにしておきましょう。
住宅ローンを申し込むのには段階が多く、用意する書類なども多いように見えるかもしれませんが、事前にローンについてしっかり理解し準備をすれば、流れがスムーズになります。