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2017-08-21

【専門家コラム】海外で不動産に投資する場合、契約までに注意する点

  • 海外不動産コラム

海外不動産の購入と、弁護士などの専門家

日本では、特に大規模な取引ではない限り、買い手と売り手が弁護士を雇って契約書を作成するということはなく、宅地建物取引業者が仲介として、不動産の売買に関与し、重要事項を説明するという方法で、不動産の規制リスク等の重要な情報を買い手に与えています。

私は、日本でも弁護士としては特約などを契約書にいれる場合には、宅地建物取引業者ではなく契約書の作成に慣れた弁護士に条項の作成を依頼するべきであると常日頃から思っています(というのも、意味が明確でない特約条項をいれてしまった結果のトラブルが多いからです。大事な点について協議条項だけ入っているなど・・・)が、それはここではおいておきましょう。

海外では、アメリカのように必ず弁護士が関与して売買を成立させる国もあります。よって、どういう専門家を関与させて、不動産を安全に購入するかについてもお国の事情がいろいろあるわけで、「郷に入っては郷に従え」で、お国の事情を理解して専門家を関与させる必要があります。

不動産取引規制の個性(お国事情)

不動産というものはそのものに場所とか建物の形とかかなり個性がありますが、また、国ごとにも、不動産取引をとりまくお国の個性(事情)があるでしょう。不動産の登記制度がある国とない国、そもそも土地の所有はできない国、外国人の購入を規制している国など、不動産の保有・使用収益の規制は国ごとに異なります。ローンを組む場合の担保も各国の担保法という法律で規制されていて、すべてが日本の抵当権と同じようなものではありません。

しかし、たいていの場合、売買契約の標準形というものが取引の安全のためにあり、おそらくそれがお国事情(法的な個性)を反映しているものといえるように思います。そして、その売買契約の標準形をさらに売り手や買い手に有利にする特約をつけたり、不動産の個性に合わせた特約をつけるというようなことをして、売買契約をつくっていくのが、どの国でも通常であろうかと思います。

もちろん、日本のマンション売買や建売戸建売買のように標準契約をそのまま用いてスタンダードな取引をすることもあるでしょう(しかし、それでも、日本では通常、重要事項説明書によって、買い手はその物権の重要な事項を知らされて売買しています)。

しかし、大多数の国では、弁護士を売り手と買い手がつけて取引をすることが多く、互いの弁護士が依頼者に有利なように特約部分を交渉したりすることが多いようです。こういったカスタマイズした契約で取引をする場合、現地の言語がわからないままどんな契約なのかわからないのに、サインをしてしまうのは危険です。和訳なり英語版なりで、自分でも確認しましょう。そして、わからないことは弁護士なり仲介業者なりの専門家にきちんと聞いておきましょう。そういう意味で、弁護士などの専門家は信頼できる人を選ぶことが重要です。どうしても自分で判断できないなら、日本の弁護士にその契約書を読んでもらって疑問点を現地弁護士にぶつけてみるようにしてみるのも効果的であろうと思います。なぜなら、国が違っても国際取引に慣れた弁護士なら適切な質問をしてくれるからです。

専門家に費用を含めた全体費用を知ろう

こういった専門家費用とか税金とか各種の取引にかかる費用をきちんと計算して投資をするのにいくら用意しないといけないのか、それもきちんと知ってから取引をしましょう。弁護士であれば、全体にかかる費用を、弁護士費用を含めて教えてくれることも多いと思います。日本では、仲介業者さんがそういったこともやっています。

購入方法のみならず、売却方法(出口)についてもお国事情を知りましょう

株式などとくらべれば不動産は現金にするには時間がかかり、今日売ろうと思っても明日、売れるわけではありません。国によっては、買主によるデューデリジェンス(*)がかなり詳細に必要とされており、建物の状態の検査(インスペクション)をする必要があるということもあります(日本では中古物件は通常現状有志で売り買いされますので、そういったコストや時間はかかりません)。

「デューデリジェンス」というのは、取引をして法的に責任を負うべきかを決定する際に、先んじてなすべき注意義務や努力という意味ですが、今では転じて不動産投資やM&Aなどの取引に際して行われる、取引対象の調査のことです。不動産であれば、不動産の瑕疵とか法的規制にはどんなものがあるかとか、違法状態に内科とか買主の所有権に問題がないかなどを調査することになります。

購入時のことだけではなく、売却時のことも、どんな費用がかかるのか、時間はどのくらいかかるのか、知識を得てから投資をしましょう。

賃貸借や賃料に関する法制度・慣習

投資不動産を海外で購入する場合、単に買って売買益を得ようとすることは少なく、賃貸して賃料を得ようとする投資家がほとんどでしょう。日本では、定期借家契約というものもできており、一定期間で更新をしないという賃貸借契約もありますが、貴方が購入しようとしている国の賃貸借事情はどうなっているのでしょうか?インフレの時、家賃はどうやってあげられるのでしょうか?そういったことは、各国の民法とか賃貸に関する特別法で規制がされているのが通常です。基礎的な知識を得てから購入することが必要でしょう。

また、購入した時には賃借人(テナント)がいても、退去されることがありえます。そのときに、次の賃借人が見つかるまでにどのくらい時間がかかるのか、管理費、税金はその期間にもかかりますし、ローンを借りていたらその返済もあります。そうなると、海外に送金して必要な費用を払っておかないといけない事態になるかもしれません。

新たにテナントを探してくれる業者との関係ももっていないといけません。賃貸借契約はどうやって作るのか(弁護士などの費用がかかるのか?)、クリーニングやリフォームにどのくらい費用が必要なのかも、調査しておく必要がありますね。

テナントの滞納が起きた時どんな法的手段が採れるのか、それに対処する保険はあるのか、そういったことも、日本とは事情が異なるでしょうから、知っておく必要があります。

オーナーの責任

不動産を保有するという場合、どの国でも所有者の責任というものがあります。火災などで第三者の生命、身体や財産を侵害するようなこともありえます。そういったとき発生する損害賠償義務については、どのような保険があるのか、また、劣化などでオーナーの修繕が必要なときの保険はどうなっているのか、どんな選択肢があるのか、それも十分に検討しましょう。

テナントが規制違反をしていたら、建物が現地の法令、条例等に違反する状態となるということもあります。そうなると、所有者である自分が、それを違法でない状態にするために支出を余儀なくされる可能性もあるので、保険のカバーがどういう範囲なのか、そういうときもカバーされるのか、調べましょう。

管理をどうするのか

テナントの賃料回収、建物の保守管理などは、現地のPM会社に任せることになるかと思います。

その能力やノウハウによって、テナントがすぐに見つかったり、トラブルが大きくなる前に対処できたりということがあるでしょう。ですので、PM会社の選定もとても重要です。売買の時の弁護士と同様に、信頼できる業者を選びましょう。PM会社との契約書も、そういう意味ではとても大事になりますので、よく理解しましょう。

不動産価値にあった適正価格なのか?

これは、通常不動産鑑定士等に鑑定評価をしてもらえればわかります。日本では、そこまでしないで購入することも多いですが、それは他の物件との比較などで購入する方が納得できているからでしょう。かならず鑑定をもらってから購入するのが標準という国もあるでしょうし、海外の場合にはそのほうが日本人には安心です。エンジニアリングレポート(建物状況評価調査書)という建物を評価する専門家の調査結果のレポートをもらって売買をするという場合もあります。

そういった場合には、きちんともらったレポートを理解して購入するかの決定をする必要があります。もっとも、コンドミニアムなどで、頻繁に同じ建物の中での売買があって価格も公表されているような場合には、各建物の状況にあまり神経質にならないですむかもしれませんし、そういった物件が最初の購入には向いているといえるでしょう。



著者:弁護士 松野絵里子


事務所:東京ジェイ法律事務所

所属団体:東京弁護士会所属、東京弁護士会法教育センター運営委員会委員、国際私法学会会員、アジア国際法学会会員、FINMACあっせん委員

経歴:東京大学法学部卒業、1992年 モルガン・スタンレー証券入社、2000年 東京弁護士会登録 (52期)長島・大野・常松法律事務所、2010年 東京ジェイ法律事務所設立