2017-07-12
【専門家コラム】外国人が日本で不動産を購入した時の税の申告方法
- 海外不動産コラム
今野 真輔
ラポール会計事務所
これから日本ではオリンピックを控え、特に日本国内の不動産に興味がある方が多いと推察されます。相手国(日本)のことを知らないと投資も不安です。世界の国々ではタックスヘイブンを除き様々な税金があり、さらに不動産の購入、賃貸、売却についても課税方法が様々存在しています。今回は日本国のお話しをさせていただきますが、日本国以外の多くの国も納税義務者という区分に分け、課税所得の範囲や課税方式の扱いが決められています。まずはこの納税義務者を理解した上で、外国人が日本で不動産を購入した時のケースを説明していきます。
納税義務者の区分
個人の場合には大きく分けて「居住者」と「非居住者」に区分されます。今回は外国人向けのお話ですので、以下「非居住者」について考察します。
日本国内に住所も一年以上の居所も有しない人をいいます。日本からみた外国の方はこちらに該当する可能性が高いのではないでしょうか。「住所」とは「生活の本拠」を指し、その者の職業や配偶者・親族の住居等の客観的事実を総合して検討します。一方、「居所」とは「住所」が存在しない者が相当の期間継続して居住している場所を指します。それでも、ケースによって判断に迷うこともあります。
なお、国外に居住することとなった個人が次のいずれかに該当した場合には、その人は、国内に住所を有しない人と推定されます。
1.その人が日本国外において、継続して一年以上居住することを通常必要とする職業を有すること。
2.その人が外国籍を有し又は外国の法令によりその外国に永住する許可を受けており、かつ、その人が日本国内において生計を一にする配偶者その他親族を有しないこと、その他国内におけるその人の職業及び資産の有無等の状況に照らし、その人が再び国内に帰り、主として日本国内に居住すると推測するに足りる事実がないこと。船舶、航空機の乗組員野住所が日本国内にあるかどうかは、その人の配偶者、その他整形を一に親族の居住してる地、又はその人の勤務外の期間に通常滞在する地が日本国内にあるかどうかにより判定します。
課税所得の範囲
所得税法における課税所得の範囲については、納税義務者によりそれぞれ範囲が定められています。なお、非居住者については所得の発生源泉地が国内にあるもの、いわゆる「国内源泉所得」に限ることとされています。今回は不動産を取得して日本国内での確定申告がテーマになりますので、この資産を他に賃貸し、その対価を得ている場合には「国内源泉所得」として課税対象となります。
課税方式
非居住者の課税方法については、恒久的施設(PE)の有無や帰属性によって総合課税の対象又は源泉分離課税の対象に分かれます。
恒久的施設(PE)は簡単に説明をすると支店や工場などの事業を行う場所を指します。総合課税は不動産賃貸業の収支内訳書を作成のうえ個人の確定申告をすることを意味します。不動産賃貸業のケースは分離課税が認められませんが、この方式では確定申告は必要とせず、源泉徴収で税金を納付すれば課税関係は終了します。
不動産賃貸料等の範囲
所得税法では
1.国内にある不動産及び不動産の上に存する権利の貸付けによる対価
2.採石法の規定による採石権(※1)の貸付けによる対価
3.鉱業法の規定による租鉱権(※2)の規定による対価
4.居住者又は内国法人に対する船舶又は航空機の貸付けによる対価に区分されています。
※1 採石権
日本において、他人の土地において岩石や砂利などを採取する権利のことである。
※2 租鉱権
設定行為に基づき、他人の鉱区において、鉱業権の目的となっている鉱物を掘採し、及び取得する権利
租税条約
日本国内(所得税法等)の上に、各国との租税条約の規定があります。
あくまで条約が締結されていればですが、原則は国内法で判断して、関連する租税条約があればこちらが優先になります。
一般的に恒久的施設(PE)の適用にかかわらず、不動産の所在地国に課税権を認めているのが殆どです。よって、日本に不動産を取得していれば日本で課税されるということになります。
まとめ
最後に日本国内に不動産を所有すると、その得る家賃の対価に20.42%(所得税及び復興特別所得税)の源泉徴収をされ、かつ所得税の確定申告をして精算することになります。
但し、一定の要件によりこの源泉徴収を免除(源泉徴収免除証明書の交付)することもできます。
著者:今野 真輔
事務所名:ラポール会計事務所
所有資格:税理士、行政書士
所属団体:東北税理士会
専門分野:国際税務・海外進出、宗教法人、
不動産賃貸、スポーツ選手、会社設立・創業
経歴:
平成四年に東北学院大学法学部卒業
同年、仙台国税局入局
法人税、所得税を中心に税務調査を担当。
勤務しながら、日本大学で会計学、
米国カリフォルニア州立大でのプログラムで
米国の会計、税務を中心に学ぶ。
平成二七年、仙台国税局辞職
同年、税理士、行政書士を取得し、
「ラポール会計事務所」開設