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2017-06-18

【専門家コラム】日本居住者(個人)が購入した海外不動産の減価償却費の計算方法

  • 海外不動産コラム
島田 弘大

島田&アソシエイツ国際税理士事務所 所長

1. はじめに

日本の居住者である個人が海外の不動産を購入して賃貸収入を得ている場合には、日本の不動産賃貸収入と同様に、総合課税(※1)の不動産所得として日本で確定申告を行う必要があります。それは、日本の所得税法上、日本の居住者は国内だけではなく国外で生ずるすべての所得に対して所得税が課されることになっているためです。現地国で課税されているか、日本へ送金されたかどうかは関係なく、全て日本で課税されます。いわゆる、「全世界所得課税」と呼ばれているものです。

不動産所得は「その貸付けによる賃貸収入から必要経費を控除した金額」となりますが、控除できる必要経費として大きな割合を占めるものの一つに減価償却費があります。購入した海外不動産のうち、建物は時の経過によってその価値が減少するため減価償却資産に該当し、減価償却費を計算し必要経費として控除することになります。なお、土地については時の経過により価値が減少しないため、減価償却資産には該当しません。

減価償却費は不動産所得を計算する上で非常に重要になってきます。今回はその海外不動産のうち建物に係る減価償却費の計算方法をご紹介したいと思います。

(※1 総合課税)

総合課税の対象となる他の所得(事業所得や給与所得、雑所得など)と合計して所得税額を計算するもの。


2. 日本の不動産投資の場合と計算方法は異なるのか?

海外の不動産についても、国内の建物と同じ基準に従って取得価額を算定し、所定の耐用年数及び償却方法に基づいて計算します(以下、3.4.5章を参照)。取得価額の算定、耐用年数、償却方法いずれも国内と海外で分けて規定されているわけではありませんので、同じ規定を用いて算定していくことになります。

日本で所得税申告をする際には、海外不動産の所在する国での税務申告で使用される耐用年数等は使用せずに日本の所得税法に基づいて計算する点に注意が必要です。


3. 海外不動産の取得価額

購入した建物の場合、取得価額は「その購入の代価その他その資産の購入のために要した費用がある場合には、それらの費用の額を加算した金額」と「その資産を業務の用に供するために直接要した費用の額の合計額」とされています。建物を購入するために支払った不動産会社への仲介手数料なども取得価額に算入する必要があります。また、業務の用に供するために直接要した費用の額とは、例えば立退料や上棟式の費用などが考えられます。

売買契約書において建物と土地の価格が別々に記載されており、その金額が合理的に算定されている場合には、売買契約書に記載の金額をもとに区分することができますが、一括で記載されていることも多くあります。その場合には取得の時におけるそれぞれの価額の比で按分することになります。その評価額は固定資産税評価額や鑑定評価額を使用することが一般的です。一括で表記されているからと言って、任意で決めてしまうことは認められていません。

なお、国内不動産と同様の留意点ですが、上述の通り、建物の購入代金だけではなく購入のために要した費用も取得価額としなければならない点は注意が必要です。例えば、現地の不動産会社に支払う仲介手数料なども取得価額に加算する必要があります。ただし、不動産取得税や登録免許税等の租税公課など一定の費用については取得価額に算入しないことができます。



海外不動産は外国通貨で購入することが一般的ですが、その場合の取得価額の円換算方法は原則としてその取得時におけるTTM(対顧客直物電信売買相場の仲値)により換算することとされています。合理的なレートを継続的に使用する必要がありますが、例えば下記のサイトなどでレートを確認することができます。

OANDA

三菱UFJリサーチ&コンサルティング


4. 海外不動産の耐用年数


A. 新築の耐用年数(法定耐用年数)

耐用年数についても、国内不動産と同様に、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で定められた年数を使用します。住宅用建物に係る主な法定耐用年数は下記の通りです。

・木造又は合成樹脂造:22年

・レンガ造、石造又はブロック造:38年

・鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造:47年


B. 中古の耐用年数

中古の耐用年数については、使用可能期間の年数を見積もって耐用年数とすることが認められています。残存耐用年数を見積もることが困難な場合には、法定耐用年数を基にして次の算式で計算した年数によることができます。なお、1年未満の端数があるときはその端数を切捨て、その年数が2年未満となるときは2年として計算します。


海外不動産、耐用年数



5. 海外不動産の償却方法

償却方法も国内不動産の場合と同じです。建物については、「定額法」 (※2)のみとなります。定率法などの償却方法は認められていません。

(※2 定額法)

取得価額に定額法の償却率を乗じて減価償却費の額を計算する方法ですが、減価償却費の額が原則として毎年同額になる点が特徴的です。耐用年数に渡って毎年同額を償却していくイメージです。


6. 注意点

所得税の減価償却費は、法人税の任意償却とは異なり、必ず必要経費として算入しなければなりません。「今年は損失が大きいから減価償却費の計上はやめておこう」ということは認められていませんので、ご注意ください。また前述の通り、海外不動産に係る日本での不動産所得の計算は現地国の基準ではなく、日本の国内規定に従って計算する必要があります。現地国での税務申告では不動産所得が生じていなかったとしても、日本での不動産所得を計算する場合には所得が出ていたということも考えられますので、適切に所得が計算されているか注意が必要です。




著者:島田弘大(しまだ こうた)



所有資格:日本国税理士、シンガポール税理士(準会員)

所属団体:東京地方税理士会、Singapore Institute of Accredited Tax Professionals 

事務所名:島田&アソシエイツ国際税理士事務所

専門分野:国際税務、シンガポール移住・進出サポート



経歴:

早稲田大学商学部卒業後、

新日本アーンスト&ヤング税理士法人(現EY税理士法人)、

BNPパリバ証券株式会社を経てシンガポールに移住。

現在は「国際税務」に特化した税理士事務所を運営。

シンガポール移住・進出サポートの実績も多数有する。

専門分野:国際税務、シンガポール移住・進出サポート



【参照URL】

国税庁(減価償却のあらまし)

減価償却資産の耐用年数等に関する省令

国税庁 (法定57条の3「外貨取引の換算」関係)

海外の中古不動産投資を利用した節税スキーム