2017-05-23

【専門家コラム】事例に基づいたハワイ不動産法解説

  • 海外不動産コラム

著者:ロイ・M・小谷

ロイ小谷法律事務所


日本でも未だに根強い人気のあるハワイ不動産。実際に所有している方も多いのではないでしょうか? Title Guaranty Escrow Services Inc. 社のハワイ不動産の外国人購入ランキングにおいても、日本は3年連続1位を記録しています。今回はロイ小谷法律事務所のロイ・M・小谷先生にハワイ不動産売買の基本を事例に基づき、わかりやすく解説していだだきました。

【事例1】個人間で不動産売買を行う場合の購買契約書に関して

状況:サカモトさんは隣人のイトウさんが所持する土地と家の購入を提案している。二人は50年来の隣人である。サカモトさんはイトウさんに書面による購買契約書を求めたが、イトウさんはサカモトさんを信頼しているので必要ないと言いました。しかし、サカモトさんが家と土地の支払いに同意した当日に、イトウさんは家と土地を売ることを拒みました。サカモトさんは、「イトウさん、あなたは私を信頼しているから、書面の購買契約書は必要ないと言いましたね。私は購入のための現金の用意があります。あなたは私に売り渡すことに同意しました。」と言いました。

質問:サカモトさんはイトウさんに彼の土地と家を強制的に売り渡させるための、法律に基づく權利をもっていますか?

回答:いいえ。

法律解説:ハワイにおいて不動産を売買する契約の際は、土地、家、コンドミニアム、あるいはタイムシェアであっても書面の購買契約書と売主と買主両者の署名が必要になります。いずれかがない場合は、売主と買主のどちらも取引を強制することはできません。


【事例2】企業と個人間で不動産売買を行う場合の役員会承認に関して

状況:社長であるスミスさんはスミスコーポレーションの50%の株式を保持しており、スミスコーポレーションはワイキキに土地を所有しています。日本の裕福な投資家であるお金持ち社長がスミスさんの企業が保持するワイキキの土地を購入する提案をしました。スミスさんとお金持ち社長はワイキキの土地の売買に関する購買契約書にサインをしました。しかし、スミスさんはワイキキの土地を売買することに関して役員会で話し合わず、役員らはスミスさんが売買に関する購買契約書にサインしたことも知りません。

質問:お金持ち社長はスミスさんに法律に基づいて土地を強制的に売らせる權利がありますか?

回答:いいえ

法律解説:ハワイの法律において、企業が不動産の売買を行う場合は、その企業の役員会での売買に対する承認が必要になります。役員会での承認は書面の取締役会決議を通じて行われます。この場合、スミスさんはお金持ち社長との購買契約を明らかにしなかったが故に、役員会は取引を知りませんでした。また、土地の売買に関する承認を決議証明書(Certificate of Resolutions)で明らかにしませんでした。結果的に企業の所有する土地の販売の取引は無効であり、スミスさんの企業に拘束力はありません。

追加情報:ハワイでは、不動産取引の多くがエスクロー(条件付証書受託者)によって行われます。多くの場合は企業であるエスクローが、企業の役員会の承認による不動産売買に関する決議証明書(Certificate of Resolutions)を受け取らない場合、取引を締結しません。通常、エスクローは締結前に決議の証明を要求します。決議証明書(Certificate of Resolutions)が提示されなかった場合、取引を締結しないでしょう。

※エスクロー(条件付証書受託者)とは...取引の安全性を高める第三者機関のこと



著者:ロイ・M・小谷

経歴:ラファイエット大学 卒業

     ジョージ・ワシントン大学法科大学院 卒業

     大学院在学中にOren E. Long上院議員事務所及びMeyers & Batzell法律事務所に勤務

     ハワイ州司法副長官として不動産委員会及び税務局を担当

資格:ハワイの不動産仲介業者免許

     ハワイ州弁護士

専門分野:不動産、商法、会社法、訴訟、国際法、信託、遺言法

使用言語:英語、日本語

著書:Open House: A Guide to Buying and Selling Hawaii Real Estate Published by University of Hawaii Press




本コラムは、税理士、弁護士、不動産鑑定士などの専門家が執筆したコラムです。
文章は著者の責任において作成されています。

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