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2017-05-29

【専門家コラム】海外不動産購入は節税になるか(前編)

  • 海外不動産コラム

松永 ひろあき

松永 容明税理士事務所 所長



海外不動産の購入は、所得税(法人税も含みます)及び相続税の目的上も、節税になりえると考えています。ただし、税金はあくまで、いくつかの費用項目の一つにすぎません。本来のゴールは、投資収益率(Return on investment)をプラスにすること。すなわち、投資用不動産の保有期間中に得られる賃貸収益からなるインカムゲインと売却時に得られるキャピタルゲインの合計が投資原本を上回ることです。(一応、説明の便宜のために金銭の時間価値は考えないことにします)。あくまでも、税引き後の利益をプラスにしていくことが目標であり、節税はそのための手段にすぎないことを確認しておきたいと思います。今回は、インカムゲインの課税の仕組みを説明いたします。従って、今回のお題である海外不動産購入は節税になるか?に対する回答は次回以降になります。


はじめに、不動産賃貸に伴う課税所得の計算上の主な必要経費について、国内不動産の場合と海外不動産の場合を説明し、読み手の方に比較ができるようにしていきます。以下では、個人が不動産を購入した場合を前提にしますが、原則、法人の場合もそのまま当てはまります。

不動産所得を計算する際に、通常、その不動産にかかる減価償却費、固定資産税、都市計画税、事業税といった租税公課、修繕費、損害保険料、外注管理費、専門家への支払報酬、テナント募集などの広告宣伝費、共益費としての水道光熱費、借入金利息といった費用が必要経費(法人の場合は損金と呼ぶ)に計上することができます。しかし、それ以外の支出でも不動産所得の獲得に必要であれば経費計上は可能です。

A.国内不動産の場合

1. 不動産の購入にあたっては、生じる税金

不動産購入にあたって通常、登録免許税、不動産取得税、消費税、印紙税がかかります。ここではそれぞれの税金の算出方法を説明します。

(1) 登録免許税

土地については、当該土地の固定資産税評価額の1.5%、建物に対しては、0.3%相当額(平成32年3月31日まで)の登録免許税が課されます。

(2) 不動産取得税

土地・建物の税額 = 固定資産税評価額 × 4%(標準税率を前提 以下同じ)ただし、特例により以下のとおり標準税率が軽減されます。土地及び住宅 3%(平成30年3月31日まで)なお、宅地の課税標準が1/2となる特例があります。

(3) 消費税

土地の対価に対しては、消費税が課されません。他方、建物については、消費税が課されます。不動産を購入した年度に、購入者が納税義務者でない場合には、消費税は、建物の取得価額に加算されて、その建物の耐用年数にわたって、償却費として費用(損金)化されることになります。

(4) 印紙税

不動産の購入契約書に所定の金額の収入印紙を添付して納付します。納付金額を以下のとおりです(但し 例示のみ)。


印紙税

2. 不動産所得の計算上、費用(損金)に計上できるもの

不動産所得の計算上、費用(損金)に計上できる費目はすでに説明しました。以下では、重要なものについて若干の説明を補足します。

(1) 減価償却費

減価償却費は、その建物(土地は減価償却計算の対象ではありません)の取得価額、法定耐用年数(その建物の建築部材、用途などの属性に応じて法定されています。例えば、木造の場合は22年)によって年度当たりの償却費が決定されます。

(2) 固定資産税

固定資産税は、土地の公的価格や家屋について、その70%相当額(課税標準額)に対して、毎年1.4%相当額になります。土地の場合は、時価の動向を反映させるために、3年に1度その課税標準額を見直しています。固定資産税額の負担が無視できないものとなります。例を挙げましょう。


固定資産税 地代

簡単化のため、土地建物込みで1億円のマンションを賃貸に供したとします。ある年度の固定資産税は、98万円となります(小規模宅地の軽減制度は考慮せず)。ところで、国は、土地の所有者が借地権を設定せずに貸し出す場合の相当の地代を更地価額の6%相当としています。1億円の土地の相当地代は、600万円になりますが、固定資産税は、適正地代の16.3%(98万円÷600万円=約16.3%)を占めることになります。

(3) 都市計画税

固定資産税評価額(課税標準額)に対して、最高0.3%の割合を乗じた金額が土地及び家屋に対して課されます。但し、住宅用の敷地に関しては、その課税標準額は、固定資産税評価額の3分の1に縮減されます。そのほか、小規模住宅用地に該当すると、課税標準額が固定資産税評価額の3分の1に縮減されます。


都市計画税*小規模住宅用地は、考慮していない
*税率は、地域により0.3%未満の場合がある。

(4) 事業税

事業税は、個人の場合、不動産所得から290万円の事業主控除を控除した残額に5%の税率で課されます。

(5) 借入金利息

借入金利息は、土地等(等には建物を含みません)を取得するために要した借入金にかかる利息部分は、土地等の取得に要した借入金の利子を含めて計算した不動産所得の金額が赤字の場合は、赤字の金額または当該借入金の利子の金額のどちらか少額の金額が必要経費に算入されません。(法人にはその制限はない)

(6) 損害保険料と管理費

損害保険料と管理費は、通常、必要経費に算入できます。

(7) 損益計算

損益通算:その年度に生じた、不動産の賃貸から生じた損失は、他の所得で生じた赤字と損益通算ができます。


B.海外不動産の場合

1. 不動産の購入にあたっては、生じる税金

不動産の取得時にどのような税金が課されるのかを不動産の所在する国の専門家に確認してください。なお、日本の消費税に類する税金が不動産所在地国で課税される場合、その税金は、日本の消費税法上、仕入れ税額控除をとることはできないので注意が必要です。また、不動産取得のためのスタディツアー・契約調印のための渡航費などは、不動産の取得費、繰延資産(開業費)として償却費計算又は必要経費として計上できるかどうかは、日本の専門家に相談してください。


2. 不動産所得の計算上、費用(損金)に計上できるもの

海外不動産の賃貸に伴う不動産所得の計算上、必要経費(又は損金)の計上できる費目は、国内不動産の場合と同じです。但し、事業税を除く固定資産税などの(わが国の資産保有)税については、当然、不動産が日本の所在していないので課されることはありません。その資産が所在している国によって課される税金にはどのようなものがあるかを現地の専門家に確認してください。そののち、日本の専門家に必要経費に計上できるかできないかをご相談ください。

(1) 減価償却費

減価償却費の計算方法については、国内不動産の場合と同じです。

(2) 固定資産税

固定資産税(不動産の保有期間中にその保有に対して課される税金)が課されるかどうかを現地の専門家に確認をしてください。課税される場合は、日本のおける不動産所得の計算上、費用(または損金)に計上できます。

(3) 借入金利子

借入金利子について、国内土地にかかる利子費用は、国内土地の場合と同じです。

(4) 損害保険料

損害保険料、管理費は、国内不動産の場合と同じです。

(5) 所得税

現地での所得税(または法人税)の課税の対象になるものと思われます。また、日本でも課税の対象になります。従って、同じ所得に対して二重に課税されてしまいます。このような二重課税を防ぐために、日本の所得税の計算上、外国税額控除をとるまたは納税額を必要経費(または損金)計上することにより、二重課税を防ぐ又は軽減することができます。概して、外国で支払った所得税は、必要経費に計上するよりも、外国税額控除を選択したほうが有利です。


次回は、譲渡所得について説明をいたします。



著者:松永容明(まつなが ひろあき)


所有資格:税理士、MBA、LLM、CFP

所属団体:東京地方税理士会大和支部

事務所名:松永国際税務税理士事務所

専門分野:法人税や地方勢の税務申告の作成、海外税額控除、移転価格、

租税条約、税務調査、大手の外国系税理士法人との橋渡し・交渉

経歴:

1980年 慶応義塾大学商学部卒業 会計学専攻

1980年 東京国税局に就職、10年在職。所得税、資産税部門の調査を担当する。

1990年 朝日Ernst& Young税務事務所に転職

1993年 中央Coopers&Lybrandに請われて移籍する。

1995年 White&Case 外国法事務弁護士事務所の税務グループに移籍。

2000年 USB信託銀行 税務部門に移籍

2001年 トーマツの税務部門に移籍

2004年 トーマツ退社し、豪州ボンド大学のMBAコースに入学する。

2006年 MBA卒業。同年、神奈川県で、松永税理士事務所を開設する。



本コラムは、税理士、弁護士、不動産鑑定士などの専門家が執筆したコラムです。
文章は著者の責任において作成されています。